【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
『……手伝うよぉ……。』
スカジャンを座っていた椅子に掛けると、十亀は台所に向かった。
目新しいオレンジ色にいつきは顔を歪めた。
十亀は手慣れた様に切りかけた野菜の続きをしてくれる。
焼きそばは何度も十亀のと一緒に作った事のあるメニューだった。
使う野菜も量も、もう十亀は何も聞かなくても1人でいつきの台所に立つ事が出来る。
『……食べてく?』
『うん…そうしようかなぁ…。』
2人分より多めに野菜を切っている十亀を見て、いつきは十亀も食べていくのだと分かった。
手際のいい十亀をしばらく見ていて、出来上がりそうになった時にいつきは父親を呼びに行った。
夕飯は交代交代で店番をする為だ。
いつきが台所から出て行って、しばらくしたらいつきの父親が入って来る。
『………………。』
入ってすぐに、やはりオレンジ色のスカジャンが目につき、チラッとそれを見てダイニングテーブルに座った。
焼きそばを盛り付けて目の前に渡すと、父親が少し目を細めた。
『今日は条が作ったのか…。』
『よく分かるねぇ。』
焼きそばなんて誰が作っても同じだろう。
いつきの父親の言葉に、十亀はニコッと笑った。
『野菜の切り方がいつきと違う。』
そう言った後に、いただきますと言って、十亀が作った焼きそばを食べていく。
十亀も自分の分をよそうと、一緒に食べ始める。
無言で2人で食事をしているが、十亀は分かっている。
本当はいつきも父親も、自分が入った獅子頭連について聞きたいのだろう。
だけど十亀も何も言わずにただ、この家にオレンジ色が目立ってそこにあった。