【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第2章 幼馴染は殻を脱ぐ
あの日の夜、十亀はあのまま兎耳山丁子に連れて行かれた。
「…………………。」
いつきは花壇に水やりをしながら、ぼんやりと最近の十亀の事を思い出していた。
夏休みも終わって、新学期が始まると以前にも増して十亀はいつきの家に来る事がグッと少なくなった。
ずっと子供のままでは無いので、いつか十亀もいつきの家でゲームをやるより、外で友達と会う事が多くなるとは思っていた。
幼馴染と言っても、所詮は男女で、こうして離れていくのは自然な事だと分かっている。
分かってはいるが、それがなぜあのオレンジ集団なのだろう。
いつきの顔は一層暗くなって、あげ過ぎた水に気がつくと慌てて水を止めた。
ホースから水が出なくなるのを確認すると、やはりまたぼんやりと十亀の事を考えた。
『条……怪我してるよ……。』
昼間はずっと兎耳山達と一緒に居るのか、十亀は来るとしたらフラッと夕方頃に姿を見せる。
最初はお祭りの時の怪我かとも思ったが、擦り傷を見ると、どうやらその日出来た傷の様だ。
誰かを殴ったとすぐに分かる拳が痛々しかった。
いつきは救急箱を持って来ると、血が出ている場所だけ消毒する。
そんないつきの行動を、十亀は黙って見ていた。
チラッと台所に目をやると、夕食の準備をしていた様だ。
いつきの母親は今家に居ない。
ずっと入院しているからだ。
だから殆どの家事はいつきがやっている。
十亀はそれを知っているから、いつきの家に来た時はお店の事など一緒にやっていた。