【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
何処かの出店を手伝っていたのだろうか。
いつもの赤い祭りの半纏を着た十亀に、いつきは目を細めた。
「何だテメェ!!」
肩を掴まれた男が十亀に向かって怒鳴るが、十亀はその手を離さなかった。
「条!!」
いつきが十亀の名前を呼ぶと、十亀はゆっくり振り返った。
「大丈夫だから、ちょっと待っててぇ。」
そう笑って言うと、十亀は男達とその場から離れて行く。
「大丈夫なの条くん。」
隣の出店のおばさんも心配そうに、いつきに聞いた。
大丈夫なんかじゃ無い。
「おばさん、ちょっと出店見てて!お父さん探して来る!!」
いつきはそう言うと、いつも父親が懇意にしている飲屋街が集まっている出店まで行った。
そこに楽しそうにお酒を飲んでいる自分の父親を見つけると、いつきは勢いよくその肩を掴んだ。
「お父さんお店戻って!!」
そうすれば、おばさんが父親にこの状況を説明してくれるだろう。
いつきはそれよりも早く十亀の所に行きたかった。
いくら体が大きいと言っても、あんな喧嘩腰で囲まれたら大怪我をしてしまうのではないか。
しばらく神社内を見渡しても、十亀を見つける事が出来なかった。
(神社の外に出て行ってしまったのかもしれない…。)
お祭りの迷惑にならないように、十亀ならそうすると思った。
いつきは敢えて出店の無い、神社の裏の鳥居に向かった。
お祭りの灯りも届かなくて、薄暗い石段を駆け降りると、やっと十亀の姿を確認出来た。
「っじょう……。」
十亀を呼ぼうとして、いつきはその口を閉じた。
十亀の周りにはさっきの男達が地面に寝転がっていた。