【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
朝早くから出店の準備を終えて、祭りの開始時間になると、昼間は家族連れが多く集まる。
いつきは父親の隣でラムネだけのクーラーボックスの店番をする。
いつもラムネ瓶は人気で、自分達の分が無くなると嫌だから、2個は幅によけて置くのだ。
今日はそんな事をしなくてもいいのかもしれない。
結局昼間は交代交代で父親と出店の店番をして、夕方になって暗くなって来た頃に、客層がガラリと変わる。
お酒を売る頻度も高くなり、家族連れより若者達が目立つ様になる。
所々に目立つオレンジのスカジャン。
「最近ガラが悪くなったわね…。」
隣の出店のおばさんが、ポツリといつきに溢した。
その言葉でいつきは改めて周りを見渡した。
確かに、少人数の男の人達な集まりが目立ってガラが悪いと分かる。
「お姉ちゃんビール頂戴。」
ちょうどその時に、オレンジスカジャンを来たグループからお酒を頼まれた。
生ビールと缶ビールがあるが、男達は生ビールを頼んだ。
全員にビールを渡して、いざお金を貰おうとすると、その男達はお金を払わないでそのまま立ち去ろうとした。
「あの!お金下さい!!」
運悪く、その時は父親は他の出店で飲屋街の仲間と飲んでいた。
若い弱そうないつきを狙っての確信犯だったのだろう。
いつきが困ってそう言っても、男達は無視してそのまま離れていく。
悔しかったけど、深追いする度胸も無くて、いつきはグッと拳を握って、そんな理不尽さに耐えた。
「お金払ってぇ。」
その時に、十亀の声が聞こえると、いつきは顔を上げた。
男達に臆する事なく、十亀は1人の男の肩を掴んで逃さない様にしていた。