【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
十亀と入れ違いで店に入る時に、十亀の腕にぶつかった。
十亀はいつきを見下ろしている様だけど、いつきは顔を上げれなかった。
レジの前に行き、いつきはこの気持ちが何なのかすぐに分かった。
初めて十亀を怖い時思ったのだ。
それは友達だと思っていた男の子を初めて男の人だと認識した。
そんな気まずい気持ちだった。
でも結局十亀は、その後いつきに何か言う事も無かった。
あの瞬間が無かった様に、普通に居間でゲームをして帰って行く。
ほら大丈夫だ。
私達は何も変わらない。
店から出て行く十亀を見送って、いつきはそんな不安な気持ちを、自分達の思い出で消した。
しかしいつきの思いとは裏腹に、十亀はしばらくいつきの家には来なかった。
そして迎えた神社の祭りの当日になって、いつきは十亀が店に来ない事で不安を覚えた。
いつきと十亀はいつも店で会って、そのまま神社に行くのだった。
祭りが始まる前から、出店の用意を手伝って、祭りが賑わいを見せるまで店番をして、その後2人で祭りを回って家に帰る。
そのいつもの時間に、十亀の姿は見られなかった。
「条、どうしたんだ?」
「……知らない。」
父親の言葉に、いつきは簡単な返事だけで会話を終わらせる。
いつもならすぐに十亀に連絡を入れるはずのいつきが、今日は何もしない。
その行動が全てを物語っている様で、父親もそれ以外十亀の話題は出さなかった。
いつきは十亀が来なくても、いつも通り店を出て、出店の準備を父親と2人でした。