【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
そのキスにどんな思いが込められていたなんかわからなかった。
初めてのキスは本当に今の様に、何気ない時にされたからだ。
確か、中学に入った時に、部活は何にしたのか。
そんな話をしていたと思う。
そんな時に、ふと、十亀が顔を近付いて来た。
少し唇が触れるだけのキスに、いつきは自分がキスをされたと理解するのに時間がかかった。
すぐに離れた十亀の唇が、その目を伏せた顔がいつもの十亀と違う事は分かっていた。
だけど十亀はキスをしてもその後何かを言う事も無く、その後も普段通りいつきに接していた。
だからいつきはあえて何も言わなかった。
まるで普通の光景の様にいつきのキスを受け入れた理由は。
自分が初めてキスをするなら、なんと無くその相手は十亀だと思っていたからだ。
それが現実になっただけだった。
いつきはそのまま父親の手伝いをする十亀を見ていた。
親が十亀に頼み事をする理由はよく分かる。
いつの間にか体が大きくなり、今ではいつきの父親より十亀の身長の方が高かった。
当たり前の様に、酒屋の仕事をこなす十亀を見て、先ほどのキスを思い返す。
いつきは、十亀とキスをして、初めてもう辞めようと思った。
十亀の唇が触れた時に、いつきが思い浮かべたのは、さっきまで一緒にいた梅宮だったからだ。
梅宮をどんどん好きになって、いつきは十亀の存在が重くなってきた。
実際十亀はしょっちゅうキスをする訳では無かった。
それは十亀の気分で、軽く触れられるコミュニケーションの様に、いつもキスをする時は十亀のタイミングだった。