【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
「俺のアカウントだよぉ。」
十亀はSwitchの画面を見せながら、いつも様にゆっくりなインストネーションでいつきに言った。
その画面を見て、いつきは満足そうな顔をする。
「ならいいよ。」
それはいつもの2人の光景だった。
昔から変わらない2人の距離に、十亀は気を許して口元の口角を上げたまま目を伏せた。
しばらく十亀のやっているプレイを2人で見ていた。
その内店の方で動きがあった。
どうやら高齢の女性が配達を頼みたい様だった。
「条!積み込みを手伝え!!」
いつきの父親の声が居間にまで響いた。
「……えー……分かったよぉ。」
ゲームも良い途中だったが、十亀はSwitchを床に置くと腰を上げた。
その時に、いつきもSwitchでは無くて、立ち上がった十亀を見上げた。
そのいつきの顔を見て、十亀は距離を近付けると、いつきに軽くキスをした。
本当に唇が触れるだけのキスをいつきは普通に受け入れた。
十亀がいつきにこうしてキスをするのは初めてでは無い。
いつも親の目を括り抜けてキスをする十亀に、いつきは何も言わない。
十亀はいつきにキスをすると、声を荒げているいつきの父親の元に向かった。
そんな十亀の後姿を見ながら、いつきは十亀が自分に初めてキスをした時の事を思い出す。
あれは、中学に入ったばかりの頃だった。
十亀もいつきも中学はバラバラになって、小学生の時の様に頻繁に会う事は無かった。