【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
「梅宮先輩!それじゃあ!」
いつきはそれだけ梅宮に言うと、あっという間に梅宮から離れていく。
そのいつきの後姿を見て、梅宮は上げていた腕を下ろした。
いつきとの会話の中で何度も『幼馴染』『条』と言う言葉を聞く。
その言葉がいつきから出る度に、梅宮の気持ちもまたイラッとして、見送るいつきの背中に何度も悪態をつく。
それがいつきにとってどんな存在なのか、この時の梅宮はまだ知る由もなかった。
「ただいま!!」
いつきは店番をしている父親に声を掛けるとすぐに居住場所に駆け込む。
レジ奥の居住用スペースでSwitchをしている十亀を見て、いつきは安堵の息を吐いた。
すぐに帰って来ると言っていたいつきが、随分と遅く帰ってきた。
その事実に確かに十亀は苛々としていたはずなのに、肩で息を切るいつきを見て、その思いも何処かにいってしまった。
「遅い…。」
十亀の想像時間より随分と遅くなってしまったのだろう。
いつきはそんな十亀に笑顔で応えられる。
「ただいま!条!」
そう元気よく部屋に入って来るいつきを見たら、十亀の顔もまた目尻が下がった。
本当に分かっていてやっているのか、分かって無いのか…。
でも十亀自身、いつきの気持ちはどうでも良かった。
いつきが笑顔で自分の元に戻って来た。
それだけが、今の現実だから。
「ねぇ条、それ自分のアカウント?」
十亀の手元のSwitchを覗き込んでいつきは聞いた。
自分のアカウントで、ゲームをされるのは気に入らない様だった。