【WIND BREAKER:®️指定】My friend
第1章 ®️彼は何故堕ちたのか
その傷や、梅宮の体に目立って喧嘩の痕が見えると、いつきはいつも目を逸らしていた。
気持ちとは裏腹に、その姿を見る度に、梅宮は自分とは違う世界で生きていると思えたから。
「何かあったらすぐに俺に言ってね。」
梅宮のその言葉は可愛い後輩に向けられている言葉とわかっている。
梅宮の面倒見の良さは、この学校ではみんな知っているから、こんな事では特別扱いされているなんて思わない。
きっと同じ言葉を色んな人に言っていると知っているから。
「大丈夫ですよー。私の家は飲屋街のど真ん中の酒屋です。
私に手を出せば、飲屋街の何処にもお酒が配達されませんから。」
いつきは大きく胸を張って、梅宮に見せた。
その光景に梅宮は思わず声が出た。
笑っていつきを見る梅宮に、いつきもまた笑顔になる。
「そうだな。いつきは大丈夫だ。」
そう言って梅宮の手がいつきの頭に触れた。
少し頭を撫でられて、いつきは顔を俯かせた。
真っ赤になってる顔を梅宮に見られたく無かったからだ。
「……あ……条…。」
急にいつきが思い出した様に呟いて、梅宮は撫でていた手を止めた。
「家に幼馴染を置いてきちゃったんです。早く帰るそうつもりだったけど……。」
梅宮の苗の移動で随分時間を使ってしまった。
いつきは慌ててホースの片付けをした。
いそいそと片付けをしているいつきを見て、梅宮の表情が曇った。
片付けに忙しいいつきは、その梅宮の表情には気付かなかった。