私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第17章 約束
はじめの家に遊びに行った時に、一緒にご飯を食べた時の事。
「ご飯はなるべく"家族みんなで食べる事。"」
はじめのお父さんとお母さんから聞いた、梅宮家のルール。
「「どうして?」」
2人で口を揃えて首を傾げた。
そんな私達にはじめの両親は笑顔で言った。
「「ごはんを美味しく食べるためだよ。」」
「ごはんはいつでも美味しいよね?ひまり。」
「‥うん。違うの?」
まだよく分からない私達。
「今、はじめとひまりちゃんがご飯を美味しいって思えるのは、心が満たされているからなの。」
「「‥みたされる?」」
はじめの両親は私達の言葉に両手でハート形を作り、楽し気に話し始めた。
「心は、ハート形のバケツみたいなものでね?」
「そのバケツがエネルギーでいっぱいの状態が満たされているって事なんだ。」
"人は心が満たされていないと、ご飯を美味しく感じられない。"
そう言っていた。
「だから、はじめとひまりちゃんが美味しくご飯を食べられていて私達は嬉しい。」
頷きながら聞く私達。
「でもね?」
「そのバケツの中のエネルギーは辛い事、悲しい事があるとどんどん減っちゃうから、エネルギーを注いであげなくちゃいけないんだ。」
「「う〜ん‥、どうやって?」」
私達に、はじめの両親が口を揃えて言ってくれた。
"大切に思い合える人と一緒にいるだけでいい。"
思い合っている人と一緒にいれば、心は満たされて。心が満たされていればご飯が美味しい。
"ご飯が美味しければ、辛い事があっても頑張れる。"
だから。
「「はじめとひまりちゃんにはきっと、家族以外にもこれからそういう人がたくさん出来るよ。」」
と。
いつか、聞いた時があった。
‥はじめが風鈴の"てっぺん"を目指した理由。
君は満面の笑顔でこう言ってた。
"みんなでずーっと美味しくご飯を食べたいから!"
その為に必要だったのが風鈴の"てっぺん"だった、と。
この街の入口に掲げられている、"ボウフウリン"の口上。
"人を傷つける者・物を壊す者・悪意を持ち込む者、何人も例外なくボウフウリンが粛正する"
荒れ果てた風鈴を統一すれば、内側の揉め事が無くなり外部からの敵だけに集中出来る。
そうすれば風鈴の"みんな"で、大好きなこの街をずっと守る事が出来る、と。