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私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】

第17章 約束



はじめが目指す夢も何もかも全部、分かっていて私が選択した事。

「今のままだと、エネルギー空っぽになっちゃうもんね」

はじめの両頬に触れて満面の笑顔で笑って見せる私に、泣きそうな顔をするはじめ。

「ひまり‥、あの‥さ‥」

私の両肩を掴んで眉根を寄せながら、何かを葛藤するはじめ。
静かに真っ直ぐお互いの目を見つめ合う。

数分後、はじめは諦めたように首を振って。

「‥いや、やっぱり‥何でもない。」

何か隠してる。
私は、ことはの言葉を思い出した。

"‥梅がひーちゃんに本当に伝えたい事、言わずにそのままにしちゃったら嫌だから‥"

‥きっと、"アレ"に答えがある。
私は立ち上がって冷蔵庫に向かい、中からケーキの箱を取り出した。テーブルに箱を置いて、何も言わないはじめを見る。

「‥これにね、私達が‥お互いが本当に伝えたい事が込められてるって‥」

私がそう言うと、箱に視線を向けるはじめ。
私は、箱に手をかけて中身を取り出した。

‥中から出て来たのは、小さなハート形のケーキ。

真ん中に砂糖菓子で出来た男の子と女の子が乗っていた。
何となく、私とはじめに似ている。装飾の生クリームがお花の形になっていて果物が少し乗っている、一見何の変哲もない普通のケーキ。

けれど。

私は真ん中の2人が持っている花束に気付いた。
どちらも3本の花束。

男の子が持っているのは、ガーベラの花束。
女の子が持っているのは、向日葵の花束で。

この2つの花言葉は、どちらも、"あなたを愛しています。"

‥昔、花言葉が大好きだった母に教えて貰った。
花は、本数や色によっても意味が変わる事。
小さい頃に聞いた向日葵の話が大好きで。
はじめに"一目惚れ"した私にぴったりなお花が向日葵だと教えて貰ってからは、向日葵がお気に入りになった。

‥ガーベラは、私の父が母にプロポーズする時に贈ったお花。飾らない父の話が大好きで。よく、はじめと一緒に聞いていた。

微笑んでケーキを見つめる私を見て、はじめも花束に気付いた様で。ソファから降りて、床に座る私の横に寄り添って来た。

「‥椿とことはには、何でもお見通しみたいだね?」
「‥だな!」

素直に気持ちを伝えられない私達の背中をこうして、また押してくれた。
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