私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第17章 約束
"梅と2人で開けて欲しい"
‥意味深なことはと椿の言葉を思い出し、早く中身を確認したくてウズウズする私。
やがて、全ての容器が空になり全員のお腹が満たされる頃に花火も終盤に差し掛かり。単発から、連続で打ち上がり始めた大小様々な花火。気付けば全員が上を向いて花火に夢中になっていた。
その時。
夜空を眺める私の右手に触れた温もり。優しく重なったのは、はじめの左手。気付いて横を向いた私に、照れたようにニッと笑うはじめ。
「‥皆、見てないから、な!」
そう言って、手を握ってくる。
‥そんな私達に気付いた椿とことはが、ニヤニヤしていて。
いやいや、はじめ‥。‥バッチリ気付かれてるよ?
勿論、嬉しそうに夜空を見上げるはじめは‥2人の視線に気付いていない。微笑ましい私達にキュンキュンしている椿と、はじめの照れ顔を無事に拝んで満足気なことは。
その状況に、私は1人静かにクスリと笑った。
「‥私も大満足だよ。」
そう小さく呟き、夜空を見上げた‥その直後。
ひときわ大きな火柱が立ち上り。周囲の人々から、歓声と拍手が巻き起こった瞬間。最後の花火が、大輪の花を咲かせて‥暗闇の中に静かに散っていった。
ひとたび、余韻に浸っている人々で静まり返る河川敷。私達も視線を戻して川面を眺めながら暫く黙っていた。
‥遠くから、夏祭りの終了を知らせるアナウンスが聞こえて来る。静かに賑わいを取り戻しながら、帰り始める人々。
私は、はじめの顔を見て頷いた。
「‥帰ろう、はじめ。」
手は、まだ繋いだまま。
ああ、と頷いて立ち上がるはじめと私を見て、何も言わずに笑う柊。
「‥お前ら、片付けするぞ。」
そう新入生達に声を掛けると、こちらに背中を向けた。
「‥行けってさ!」
柊のその背中を見て、微笑みながらそう言うはじめ。
椿とことはも笑顔で頷いていた。
「「‥行って。」」
‥ありがとう。
私は2人に微笑んではじめの手を強く握った。
皆に背中を向けて歩き出す私達。不思議と悲しくはなかった。人波に混じってゆっくり歩く。
‥今、何時なんだろう?
そう思って確認しようとスマホに伸ばした私の手を、掴んで制止してきたはじめを驚きながら私は見上げた。