私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第17章 約束
「‥‥?」
私はゆっくり両腕を下ろして目を開けた。
目の前で、私の背後から伸びた誰かの腕に振り下ろした腕を掴まれて固まる男。
それを見て、後ずさる取り巻き達。
「‥俺の彼女に何してんの‥?」
‥いつもとは違う、怒りを含んだ静かな低い声。
「‥はじめ‥」
後ろを向いて顔を確認した私の安心した表情に微笑んで頷くはじめ。
「大丈夫だから。‥下がってて。」
そう言って私を背後に庇い、目の前の男達を威圧する。
「‥穏便に済ませたいんだ。‥分かるよな?」
そう言って、男の腕を掴む力を強めるはじめ。
穏やかな声色だが、多分‥目は笑っていない。こちらに背を向けていても分かる。はじめが放つ、空気が変わるほどの威圧感にジリジリと後退りする男達。
「‥チッ‥、やってらんねーよ!!」
怖気付いた男はそう言って、はじめの腕を振り払って逃げて行った。その背中を見送ると、溜め息をついてこちらを向くはじめ。
「‥色々あって、遅れて来たら、目の前で絡まれてるひまりを見つけてすげー焦った‥。怪我してないか‥?」
私の全身を確認しながら、浴衣に付いた砂埃を払ってくれるはじめの姿に、安堵した私は身体の力が抜けてしまった。倒れそうになった私を慌てて抱き止めるはじめ。
「‥!!‥ ひまり!大丈夫か?!」
「うん‥、大丈夫。安心したら力抜けちゃっただけ‥」
‥背中に感じる温かい腕に安心して目を閉じた。
「良かった‥はじめが来てくれて。」
‥危うく、乱闘になる所だったよ?
「椿とことはは一緒じゃなかったのか?」
心配するように私の顔を覗き込むはじめ。
「一緒だったんだけど、あの人達にぶつかって‥。人混みではぐれちゃったの」
「‥そうか。でも良かったよ、怪我してなくて。」
頭を撫でて抱きしめてくれるはじめ。‥泣きそうになるほど優しく抱きしめてくる腕に胸が苦しい。私はそっと身体を離した。
「‥皆、きっと心配してるだろうから行こう?」
「‥そうだな!」
私の言葉にそう言って、差し出して来たはじめの手を私は微笑んで取った。
「行こう。」
手を繋いで歩く。
「‥それ、付けてくれたんだな。」
歩きながら、私のイヤリングに気付いたはじめが嬉しそうで。
「やっぱり、良く似合ってる!」
「‥ありがと!」
‥時間を止めてしまいたい。