私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第17章 約束
待ち合わせ場所は夏祭り会場の河川敷。人混みを掻き分けて目的地まで進む私達。当たり前なのだが、かなり人が多い。はぐれないように、私は2人と手を繋いで歩いていた。
‥しかし。
私は、向かい側から歩いて来た若者の集団にぶつかってしまい、繋いでいた手を離してしまった。
「いたっ‥!」
尻もちをついて痛みに顔を歪める私。
椿とことはが名前を呼ぶ声がするが、人波に流されて遠ざかってしまった。
と、急に目の前が暗くなり‥。
嫌な予感がしながら視線を向けた先に、私を見下ろすガラの悪い男達。
‥最悪だ。
私は俯いた。
目の前にしゃがみこんだ男に顎を掴まれ、無理矢理上を向かされる。
「オイ!イテェじゃねーか‥って、へ〜?キミ、めっちゃ可愛いじゃん。」
舐め回すようにニヤニヤと見てくる、不快な視線。
‥気持ち悪い。
本当は蹴り飛ばして逃げたいけど、絶対に騒ぎは起こしたくない。
周囲に助けを求めるように視線を向けるが、目を合わせないように私達を避けて通り過ぎていく人々。
助けを諦めた私は仕方なく、顎を掴む男の手を振り払って立ち上がった。
「‥ぶつかってすみませんでした。」
そう言って頭を下げて離れようとしたが‥そう簡単にはいかなかった。
「オイ、どこ行く気だ?まだ話は終わってねーぞ?」
腕を掴まれて、引っ張り戻される身体。
腕を掴まれた私の周りをさらに3人の男が囲んで来て、完全に身動きが取れなくなった。
「‥離してください。」
そう言った私の言葉に笑う男達。
「ビビってんじゃん、かわいそ〜」
「可愛いね〜」
「一緒に周ろうよ〜」
好き勝手言いながら、ゲラゲラ笑う男達に怒りが込み上げる。
‥相手にしちゃダメ。
私が、グッと怒りを堪えていたその時。
不意に私の腕を掴んでいた男の手が、抵抗しない私の頬に触れて来た。
「‥っ!?触らないで!!」
私は頬に触れた男の手を思い切り振り払い、突き飛ばした。
その衝撃でよろけた男は体勢を直すと、舌打ちをしながら私に向かって拳を振り上げて来た。
「‥いってーな!んの、アマ!!」
‥殴られる!
そう分かった私は、両腕で顔を庇ってギュッと目を瞑り‥衝撃に備えた。
しかし、いつまで経っても来ない衝撃。