私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第17章 約束
プレゼントを手に取って眺める私に、2人がもう1つ大きな箱を手渡して来た。
「ひまり、あともう1つあるの。」
そう言って、椿が手渡して来たのは‥ケーキの箱。
「これ‥ケーキ‥だよね?」
私の言葉に頷く椿から箱を受け取って、首を傾げる私。
‥何故か無性に中が気になった。
気になって箱の中を見ようとした手をことはに制止される。
「ひーちゃん、これは梅と一緒に開けて見て欲しいの。」
「はじめと‥?」
頷いて、真剣な顔で私を見つめる2人。
「‥分かった。」
何とも言えない圧を感じ、箱に伸ばした手を引っ込め頷く私。
「‥梅がひーちゃんに本当に伝えたい事、言わずにそのままにしちゃったら嫌だから‥」
ことはがポツリとそう呟く。
私とはじめに何があったか2人は聞かないけれど、きっと分かってる。私は、そんな椿とことはの手を握って口を開いた。
「はじめの事‥大好きだよ。それはこの先もずっと変わらない。絶対に。」
黙って話を聞く2人。
「‥ただ、これから少しの間‥今まで続けて来た中途半端を辞めて色々落ち着くまで離れるってお互いに決めただけ。」
分かっていた様に頷く椿と、悲しそうに顔を伏せることは。
「別れたりなんてしないから大丈夫。‥もちろん、お姫様に戻って閉じこもるつもりもないよ。」
「‥自由を選んだのね、はじめも、ひまりも。」
椿の言葉に、私は静かに微笑む。
「‥そんなの悲しいよ‥別れと同じだよ、ひーちゃん‥」
そう言って泣き出したことはを抱きしめて、私は話を続けた。
「‥違うよ?ことは。」
私とはじめにとっては、別れじゃないから。
「せっかく進展したけどね?結局、このままだとお互いに中途半端なままで‥変わらない。ずっと苦しいのが分かっちゃったから。」
純粋に"好き"っていう気持ちだけでいられた過去から離れないと、何も変わらない。
‥はじめの夢のために必要な事だから。
「お互いに目を逸らしてた‥優先しなきゃいけない事に向き合う時が来ただけ。」
いい加減、大人にならないといけない。
ただ、それだけ。
「‥梅もひーちゃんも不器用すぎるよ‥というか‥本っ当に‥バカ!!」
ことはの言葉に、私は笑うしかなくて。
「うん、ごめんね‥。」
そう言って、もう一度ことはを強く抱きしめた。