私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第17章 約束
〜♪〜♪
翌朝。
夏祭り当日。
‥昔の夢を見ていた私は、規則的なアラームの音で目が覚めた。
いつもと同じ朝。カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しくて、目を細める。手を伸ばしてカーテンを開ければ、頭上には快晴の夏空。その空と同じくらい私の気持ちはスッキリしていた。
今日は、お店はお休み。
「早起きしすぎちゃった‥」
アラームの時刻を設定し直すのを忘れていたので、まだかなり早い時間。けれど2度寝する気にはなれず、スマホを手に取ってベッドに腰掛けた。画面には沢山の誕生日のお祝いメッセージの通知。1件ずつ確認して、温かいメッセージに笑顔になる。
もちろん、はじめからも届いていた。
"誕生日おめでとう!!今日、楽しみにしてる!!"
と、いつも通りの変な野菜のスタンプ添え。
"ありがとう!私も楽しみにしてる。"
そう返信したら、すぐに既読が付いた。
‥はじめ、菜園にいるのかな?
屋上で水やりをする姿が思い浮かび、口元が綻ぶ。
「‥私も水やりしなきゃ。」
ふとお店の花壇の花を思い出した私は、立ち上がって下に降りお店の外に出た。
そして、一歩踏み出した瞬間。
‥扉の前に居た誰かと、ぶつかった。
よろけた私を優しく受け止めてくれる腕に掴まり、その顔を確認した瞬間‥私は目を見開いた。
「‥はじめ‥?」
「‥うん。」
私を見下ろす‥いつもの大好きな笑顔。私は、幻なんじゃないかと思って確かめる様にはじめの頬に手を伸ばした。驚く私に笑うはじめ。
「大丈夫。‥幻じゃないよ、ひまり。」
「何で‥?」
戸惑う私に、
「会って、1番最初におめでとうって言いたかったから!!」
そう言って頭をポンポンしてくるはじめ。
‥嬉しくて。私は、はじめに抱きついていた。何も言わずに受け止めてくれるはじめ。
今だけは許してほしい。私の最後の我儘だから。
「‥これから菜園に行くから、また夕方会おうな!」
暫くして、静かに身体を離すはじめ。
「‥うん。」
頷き、手を振ってはじめから離れる私。
‥心配してくれてたんだよね、ありがとう。
はじめもあの日の約束‥思い出してくれてたのかな。
そう思いながら、去って行くはじめの背中を見つめていた。