私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第17章 約束
高校生になってからは毎年、お店の2階からはじめと2人で見ていた花火。浴衣を着て、部屋で2人きりで過ごす特別な夏祭り。はじめも毎年浴衣を着てくれて。はじめが屋台で買って来た物を食べながら花火を眺めていた。
花火が正面に見える、この部屋の窓際が特等席。花火を眺めながら一緒に過ごす最高の誕生日。
私は、窓際に腰掛けてすっかり暗くなった空を見上げた。
明日、この空に打ち上がる花火。
この部屋から見ていた花火と、外で見る花火はどのくらい違うんだろう?
ふと浮かんだ疑問の答えはすぐに出た。
‥何処からでもきっと変わらない。
はじめとなら、何処に居ても全てが特別だから。一時の夢だって分かってた。それでも、こうして良かったって思える。ようやく取り戻せた時間もあるから。ほんの短期間だけど外に飛び出して我儘を貫き通して‥凄く楽しかったし幸せだった。
窓ガラスに映る、穏やかな表情の自分が何よりの証。私はカーテンを閉めて窓から離れた。
そして後ろを振り返った時に、あるモノが目にとまった。それは、幼い頃壁に書いたはじめと私の成長記録。
昔も何度かこの部屋で花火を見た。その時は私もはじめも、まだ身長が小さかったから背伸びしたり、椅子の上に立ったりして見てたっけ。懐かしい思い出。
‥この時、交わした約束。
"オレ、いつか背伸びも椅子も要らなくなるくらい大きくなる!"
"うん!私も!"
昔は、必死に背伸びしながら体を寄せ合って窓から見上げていた花火。
"毎年、いろんな高さで見るの楽しいな!"
"そうだね!私、もっと大きくなりたいな〜"
"‥どれくらい?"
"え?う〜ん、はじめと‥同じくらい?"
"えー!それはダメだよ"
"‥どうして?"
"だってさ、オレより大きくなったら‥守ってあげられないだろ?"
"じゃあ‥私がはじめを守ってあげる!"
"それもダメ!ていうかイヤだ!"
"えぇ〜?"
"とにかく!ひまりは、今のままでいいよ"
"何で?‥私はイヤ、大きくなりたい‥"
"‥小さい方が可愛いし、オレがひまりを守りたいからさ!"
"‥え?"
"だから、そのままがいい。"
"このままじゃないと‥はじめは守ってくれないの?"
"‥ううん、違うよ。ずっと守ってあげる。"
"‥ホント?"
"‥‥‥‥。"