私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第16章 夏休み2
「髪の毛下ろしてるひまりが1番、大好きだ!いつも可愛いけどな!」
そう言って、近付いてきたはじめの額と私の額がくっつく。
私は両頬に触れているはじめの手を握って目を閉じた。
‥もう少しこのままで居たい。
目を開けると、再び近付くはじめの顔。‥もの凄く良い雰囲気なのだが。こんな時に私は、とある事を思い出し‥はじめの頬をつねっていた。
「‥?!‥いたた!痛いって!」
私の予想外の行動に驚き、目を見開くはじめ。
「‥昼間、綺麗なお姉さんに声掛けられてデレデレしてたの思い出した‥」
ムッと、頬を膨らませてはじめを見る私。
‥私の事、心配する前に自分も気を付けてよね?君はモテるんだから。
つねられた頬を押さえながら、私の言葉にバツの悪そうな顔をするはじめ。
「‥ごめん、デレデレしたつもりなかったんだけど‥」
そう言って頬を掻くと、あ!と何かを思い出したようにスマホを取り出したはじめが、私に画面を見せてくる。
それは、写真フォルダで。
‥写っていたのは、ほとんど私だった。
「‥俺、今日ひまりしか見てなかったよ?ひまりが1番!」
いつの間に撮られていたのか、沢山保存されている笑顔の私。写真を見て、嬉しそうに話すはじめに気が抜けてしまって。
‥そういうところが本当ズルい。こんな事で許せちゃう単純な私。笑っちゃうよね。
やっぱり、私達に王道デートは合わない。
予測不能なジェットコースターみたいで楽しいこの感じ。これでいい。
涙はすっかり引いて、悲しみも少し和らいだ。
一生の別れじゃないから。ほんの少しの間の辛抱。
そう思い、笑顔になった私に両腕を広げておいで!と、言うはじめの胸の中に飛び込んだ。
胸いっぱいに広がる、はじめの香り。いつも温かいお日様みたいな香りがして安心する。
私達は、しばらく抱き合ったまま時を過ごした。
ーそれから数時間。
民宿に戻る頃には、日付が変わっていた。
私達は、2階に続く階段の前で繋いでいた手を離した。
「「おやすみ。」」
手を振って階段を登る私と、私の背中を笑顔で見守るはじめ。
‥私は振り返らず部屋に向かった。