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私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】

第16章 夏休み2



いつの間にか海岸に着いていて、私達は砂浜に足を踏み入れた。
私は歩く度にサンダルに入る砂が気になり、サンダルを脱いで裸足になった。

昼間の熱が残る砂浜はまだ温かかった。

「まだあったかいよ、砂浜!」

そう言いながらはしゃぐ私を見て、はじめもサンダルを脱いだ。

「ね、あったかいでしょ?」

うん、と頷いて笑うはじめ。

暗がりの中見えたその顔は‥少し悲しそうで。

聴こえるのは規則正しい波の音だけ。周りに人の姿はあるが、皆静かに海を眺めていた。

夜空を見上げれば、もうすぐ雲間から満月が出そうだった。

「‥はじめ、あっち行ってみない?」

私が指差したのは、昼間行けなかった少し高台になっている岩場から海を眺められる場所。

「‥そうだな。」

はじめが急に繋いでいた手を強く握り直して来たから‥全てを悟った私。それに、海岸に着いてから急に口数も少なくなってずっと何かを考えているようだった。

私も黙って歩いていた。
岩場に辿り着く頃、満月が雲間から出て辺りが明るくなる。私達は繋いでいた手を離して、横に並んで岩に座りしばらく黙って海を眺めていた。

やがて雲間から顔を出した月明かりが海に反射して、目前に幻想的な景色が広がり始める。

「今日、楽しかったね!」

私はら海を見つめて黙るはじめに声を掛けた。

「うん、楽しかったな〜!」

海を見ながらそう言うはじめは、笑ってるのにどこか悲しそうで。

そんなはじめに私は、自分から話を切り出そうと口を開いた。

「はじめ」
「ひまり」

すると、お互いの声が重なり‥思わず顔を見合わせる私達。

ふふっ、と笑ってはじめの両頬に手を伸ばす私。

「‥やっぱり、大好きだな〜!」

両頬を包みながらの、私の突然の言葉に驚き固まるはじめ。

‥切り出せなかった。‥離れたくない。

「私ね、いつものはじめも大好きだけど‥髪の毛下ろしてるはじめが1番好き!」

笑顔でそう伝えて、気付いたら涙が溢れていた。

「あれ‥私、何で泣いてんだろ‥」

ごめん、と言って浴衣の袖で慌てて涙を拭けば、止まるどころか更に溢れてくる涙。

駄目だ‥。
考えたら苦しくて堪らなくなった。

嗚咽まで漏れる。‥何で、今なの?

「‥離れたくないよ。」

伝えようとしていた事と真逆の、口から出た本音に私は両手で顔を覆った。




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