私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第16章 夏休み2
2人に腕を引っ張られ続け、ようやく私は覚悟を決めた。
「‥うぅ、分かった‥。」
私は着ていた上着を脱いでパラソルの下から砂浜に踏み出し、嬉しそうな2人に腕を掴まれたままはじめ達の元へ向かった。
「お待たせ〜!!」
椿の声に、一斉にこちらを見る男性陣。全員、別に何ともなさそうな顔。よくよく考えたら、ビーチにいる女の人達は皆同じ様な装いなのだから恥ずかしがる必要もなく、私は安堵した。
「よし!全員揃ったな〜!んじゃ、早速入ろうぜ!」
はじめの言葉を合図に、海へと駆け出す新入生達。
桐生くんと蘇枋くんは、海に入りたくないとの事で荷物番をしてくれている。
私も、椿とことはと一緒に海へと入った。
「気持ちいい〜!」
照りつける日差しの暑さに、肌に触れる水温が心地良い。
はじめと柊、杉下くんと柘浦くんは沖まで遠泳をして楽しそう。
私は急に水温が変わる沖の方へは行けないので、椿とことはと浅瀬で海水浴を楽しんでいた。
「あ!ひまりさ〜ん!椿野さんと、ことはさんも!」
そんな時、突然名前を呼ばれた私が声のした方へ顔を向けると、楡井くんと桜くんが居た。
2人が居る場所にはバナナボート乗り場があり、そこから楡井くんが手を振っていた。
「楡井くん、どうしたの?」
私達は海から上がり、楡井くんと桜くんに合流した。
「桜さんがバナナボート乗った事ないって言うので、今から乗るんですけど‥折角だから一緒に乗りませんか?人数多い方が楽しいので!」
そう言う楡井くんの後ろで、べ、別に乗りたくねーし!と言いながらも乗りたそうにうずうずしている‥素直じゃない桜くんに笑いながら。
「いいね、楽しそう!椿とことはもいいよね?」
2人に確認する私。
「いいわよ!」
「私も賛成!」
2人の同意を得て、乗り場へ向かい歩き出したその時だった。
「ひまり〜!」
‥私を呼ぶ、はじめの声。
振り返って見るとこちらに走って来るはじめの姿。
その様子を見た椿とことはが、急にニヤニヤし始めた。
「‥やっぱり、効果バッチリね〜♪」
「‥早速、ヤキモチ焼いてる〜」
何の事か分からず、首を傾げる私。
「‥何が??」
私とはじめを見ながら、クスクスと笑って楽しそうな2人。
いつの間にか、楡井くんも何かを察した様子でそそくさと乗り場に行ってしまった。