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私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】

第4章 願いの芽と不安の種



私は生まれつき身体が弱い。
少しでも外出したり激しい運動をしたりするだけで高熱を出してダウン。

極めつけは喘息持ちという体質。
小・中学校はほとんど通えずに終わった。
行けない時は、はじめが伝達係をしてくれてた。
そんな状態なので高校は迷わず通信高を選んだ。

年齢とともに回復傾向ではあるが完全な健康体には程遠い。

かといって、"今までこの境遇を恨んだり、悲観した事はあるか?"と聞かれれば‥無かった。

‥今まで、は。

***

※「聞いてる?ひまり!」

少し困った顔で私の手を掴んでブンブン振るはじめ。

対する私は泣く寸前の顔。

「‥気持ちは分かった。俺の事考えてくれてるのも。俺の言動で不安にさせて、気ぃ使わせてごめん。けどひまりの身体心配だからさ‥俺は反対。」

柔らかい言い方だが譲らない意志を感じさせる。

「‥嘘つき。」

はじめのその言葉に堪えていた言葉が出てしまう私。はじめが本気で私を心配して考慮してくれているのは分かってる。けどここ数年は‥その優しさが苦しみになってた。私は‥はじめの本心が知りたい。

‥遡る事数分前ー。

喫茶ポトスにて。

「はじめ、これ!」

私は商店街のおじさんに貰った夏祭りのビラを見せる。

「お!もうそんな時期か〜!また、2階で一緒に花火見ような!!」

はじめは満面の笑顔でそう言うと、くしゃくしゃと私の頭を撫でてくる。

‥毎年恒例の返答&やり取り。

ちなみに"2階"とはポトスの2階。
住居部の事である。

今まではそれで良かった。
はじめと一緒に見る花火は毎年特別な思い出で‥"約束"だから。

‥特別だからこそ私の中に生まれた初めての"欲"。

外で"みんなで''楽しみたい。
私もみんなの輪の中に入って堂々とはじめの隣にいたい。

芽生えた願いと同時に湧き上がる"不安"。

毎年2人きりの時間を作ってくれて嬉しい。

でも‥本当は。
はじめもみんなと一緒がいいんじゃないかな?
私が‥我慢させてるんじゃないかな?

いつからかそう思うようになっていた。

「あのね、はじめ?」
「ん?」

私の顔を笑顔で覗き込むはじめの淡いブルーの瞳を真っ直ぐ見つめて心の中にしまっていた思いを口にする私。

「花火‥今年は外で見たい。はじめと‥みんなと。」

‥少し声が震えた。


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