私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第15章 夏休み
私とはじめの関係は、風鈴高校の生徒はもちろん街中の人も知っている。
街の外にはまだ知れ渡ってはいないだろうが、私が外に飛び出す決心をしてから一緒に過ごす事が増えた為、いつ狙われてもおかしくない状況で。
それに伴ってボウフウリンによる街の巡回もより一層強化され、見回りの回数も以前より増えていた。
私は、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
皆は優しいから。
気にするな!って、笑って言ってくれるけれど。
私のせいで、皆の大事な時間を奪っているかもしれないと思ってしまって。
‥今、少し心苦しい。
杉下くんの事もそう。
モヤモヤしながら立ち尽くす私の横を、水やりを終えた杉下くんが通り過ぎて行く。
「‥あっちは終わったので、帰ります。」
はじめにそう告げて帰ろうとする彼を、私は思わず呼び止めていた。
「あ‥!杉下くん、待って!」
突然呼び止められて、少しビックリしたようにこちらを見る彼。
はじめも大声を出した私に驚いたようにこちらを見ている。
2人の視線にしどろもどろになる私。
「あ、あの‥もし、朝ご飯食べてなかったら‥沢山お弁当作って来てあるから一緒に食べない?」
そう言った、私の言葉に少し迷う素振りを見せるが首を振って口を開く杉下くん。
「‥いえ、梅宮さんと2人で食べてくださ‥」
そこまで言いかけた瞬間、杉下くんのお腹が盛大に鳴った。
「‥‥!」
恥ずかしそうに慌ててお腹を押さえて俯く。
そんな私達の様子に、何かを察したはじめが杉下くんの肩を叩いた。
「お腹空いてるんだろ?ひまりもこう言ってるし、一緒に食べようぜ!な?」
はじめの言葉にようやく頷いてくれた彼と休憩用のテーブルに向かう。私はテーブルにお弁当を広げて、はじめと杉下くんに冷たい麦茶を入れた。
「‥ありがとうございます。」
「おぅ、サンキューな!」
目の前のホットサンドとスープに目を輝かせる2人に、私は紙皿を渡して食事を促した。
「「いただきます!」」
そう言って、もの凄い勢いで食べる2人を静かに見守る私。
沢山作って来て良かった。美味しそうに食べる姿を見ながら、私は初めて杉下くんに出会った時の事を思い出していた。
私が、彼を呼び止めた理由。
それは、ずっと聞きたかった事があるから。
私と杉下くん2人だけの‥はじめが知らない出来事。