私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第14章 稽古と嫉妬
*はじめのひとりごと 2*
‥ ひまりは警戒心が無さすぎる。
善悪が分かっていない、という訳ではない。
しかし。
この頃、この世には善しかないと思っているんじゃないか‥?と、心配になる時が頻繁にあって。目が離せない。
昔からそう。
誰にでも平等に優しくて、愛くるしい性格。
おまけに容姿にまで恵まれていたから。
とにかく‥モテていた。当の本人は全く気付いていなかったが。
多数の異性から寄せられている想いに、全く気付いていなかった上に無自覚な事が多すぎて。ハラハラしながら小・中学校時代は見守ってきた。
中学最後の年に、ずっと抱いていた想いを伝えて。想いが通じ合った時は叫びたい位で。嬉しかったし、心底安心した。ようやく自分のものになったから、これで少しは不安がなくなるだろうと。
‥それなのに。
むしろ、手に入れてからの方が不安になる事が多くて。嫉妬、独占欲、不安、不満。俺の中に色々な負の感情が生まれた。
そして遂に。
我慢の限界が来た。
お互いの思っている事を打ち明け合って、少しずつ進展し始めたひまりとの関係。
自分の中に芽生えた醜い感情も全て、ありのままの自分を受け入れてくれるひまりに安心して甘えたい欲を出した。
‥タイミングが悪いとはこう言う事かと、思い知った。
柊との稽古は、渋々だが了承していた。柊になら安心して任せられるから。
それに、楽しそうに稽古の話をしてくれるひまりはいつも嬉しそうで。何より、俺に負担をかけないよう自分なりに出来る事を必死に頑張る姿が誇らしくて。
‥無下にする事は出来なかった。
選択を後悔してないかと言えば‥していたんだと思う。
ひまりにもたれかかった時、ひまりの首筋からほんのり柊が愛用している香水の香りがして。
気のせいだと思いたかったが、体と心は正直で。動揺して気が付けば、ひまりを押し倒して問い詰めていたから。
怯えた顔で俺を見つめるひまり。
自分を見上げる潤んだ瞳。俺の下で組み敷かれて、身体の自由を奪われて動けない姿。
‥全てに欲情しそうで、冷静になろうと必死だった。