私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第14章 稽古と嫉妬
さらに、それによって痕に気付かれないように常に注意して柊と距離を取り続けなければいけない事も。
はじめ‥
しっかり予防線張られた‥
そんな巧妙なはじめの思惑に気付いた私は、空を仰いで苦笑した。
いつもと違った不審な動きをする私に、不思議そうな顔の柊。
「陽丘、お前‥今日、何か変だぞ?」
「‥そんな事ないよ?」
笑って誤魔化しながら後ろを向いた私。
そんな事‥ある。
‥今日、本当に変なんだよね私。
この間、目の当たりにしたはじめの知らない表情(かお)。
いつもの優しい笑顔の奥底に秘めた‥男の顔。
怖かったけど、不覚にもカッコいいと思ってしまった私は。
‥この間みたいなのは心臓に悪いから勘弁なんだけれど、まだまだ知らないはじめの色々な表情(かお)が見られるなら‥
嫉妬されるのも、たまには悪くはないのかも‥?
‥なんて。そんな事を考えてしまっているから。
その後、何とか気付かれないように稽古を終えて帰宅した私は‥いつも通りお店の前で、私達の帰りを待っているはじめにしてやられる。
気力を使い果たしてぐったりしている私に、満面の笑顔を浮かべながら、
"‥分かったか?"
と、口の動きで伝えて来るはじめ。
笑顔の圧が凄い‥参りました‥。
ちょっと悔しいけど‥まだまだ私より、はじめの方が一枚上手みたい。
でも、君が見せてくれる色んな表情(かお)。
やっぱり‥悪くない。