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私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】

第14章 稽古と嫉妬



とにかく何とか話を聞いて貰おうと、はじめの腕を掴んで体を起こそうとするも逆に両手首を押さえられて更に動けなくなる私。

「はじめ、痛い‥」

手首を押さえつけてくる力と、話を聞いてくれないはじめの冷たい表情に泣きそうになる。私の言葉に少しだけ力を緩めてくれるが、離してくれそうにないので真っ直ぐにはじめの眼を見て、必死に口を開いた。

「‥本当だから、本当に稽古してただけ。」

黙って話を聞くはじめ。

「組み手の練習してる時、足元がふらついちゃって‥倒れそうになった時に柊が支えてくれたの。」

表情を変えないはじめに必死に伝える。

「柊、私を庇って下敷きになってくれたから密着して‥その時に香りが付いたんだと思う。」

そこまで説明すると、ようやくはじめが口を開いた。

「ただ‥抱き止められただけ‥って事?」
「うん‥。」

私が頷くと、溜め息をついてやっと両手を解放してくれた。自由になった両手に安心し恐る恐る体を起こす私。

はじめはこちらに背中を向けたまま黙っていて。
暫く沈黙した後。

「‥いきなり話も聞かずにごめん。」

私に向き直って、そっと抱きしめてくれた。
いつも通りの優しい声と優しく包みこんでくれる腕に安心して、私もはじめの背中に腕を回した。

「‥首の近くから香りがしたから。俺、動揺した。」

耳元でそう言うはじめは、情けない自分にかなり反省している様で少し落ち込んでいた。

「その‥何かないと、そんな所に香りつかないだろ?」

今度は私が黙って話を聞く。

「柊の事は信用してるし、絶対そんな事しないのも分かってる。」
「‥うん。」
「けど‥やっぱり嫌なんだよ。」

少し身体を離して私をジッと見つめるはじめ。

「他の男と一緒にいるひまりも、他の男の香りがするひまりも。‥嫌だ。」

そう言ったはじめに、キスで唇を塞がれ身体をきつく抱きしめられて動けなくなる。突然の激しいキスと抱擁に危うく酸欠になりかけた私は、必死にはじめの胸を両手で押し返した。

「‥は‥じめ、ちょっと‥待って‥」
「‥今まで、色々我慢してたけど。」

押し返す私の手を掴んで真っ直ぐに見つめてくるはじめ。

「もう、‥やめた。」

そう言って今度は、首筋に触れたはじめの唇。肌に吸い付く唇と熱い吐息に身体がビクリと反応して全身が熱くなる。

「やっ‥」





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