私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第14章 稽古と嫉妬
「ひまり!お帰り。柊もお疲れさん!ありがとな〜!」
「はじめ、ただいま!」
「おぅ。」
それから3人で店先で少し話をして。
「‥んじゃ、帰るわ。」
「おう!また明日な!」
「柊、今日もありがとう!また来週よろしくね。」
会話を終え、はじめと一緒に手を振って帰って行く柊を見送った。
「はじめ、夕飯食べてく?」
「食べる!」
目を輝かせて嬉しそうなはじめに笑顔になる。
私達は、お店に入って2階に上がった。
「何食べたい?」
「オムライス!!」
私の言葉に、笑顔で子供みたいに手を上げてはしゃぐはじめ。そんなはじめに、はーいと返事をしてエプロンを着けて台所に入る私。
ささっと調理を済ませた後、はじめと夕飯を食べた。目の前で、美味しい!世界一!を連発しながらオムライスを食べるはじめと、今日1日の出来事や稽古の話をしながら楽しく食事をした。
そして食事が済み、食後の紅茶を飲みながらソファで2人でくつろいでいたこの時に‥事件は起きた。
***
この時、お店の帳簿を付けていた私にもたれかかって本を読んでいたはじめ。
「‥ ひまり。」
突然、読んでいた本をパタンと閉じて体を起こし‥私の名前を呼んだ。
「ん?」
帳簿から顔を上げてはじめを見ると、何故かとても不機嫌そうで。
「‥今日、稽古だったんだよな?」
と、疑う様な声色で私の顔を覗き込んで来る。
「え‥?うん‥そうだよ?」
真顔で見つめてくるはじめに、言い表せない圧を感じて思わず立ち上がっていた私。
瞬間、強い力ではじめに腕を掴まれた私はそのままソファに押し倒された。
「はじめ‥?」
「‥香水の匂い。」
自分を見下ろすはじめの口から出た言葉。
「香水‥?」
眉をしかめて分からない様子の私に苛立つはじめ。
「‥柊が、いつも付けてる匂い。」
その言葉に私は、ハッとした。
ふらついて抱き止められた時、密着したから香りが付いたんだ‥。
その私の表情に、さらに不機嫌になるはじめ。
「匂いが移るって‥、そんなに近付いて稽古してたの?」
「はじめ、違うの‥稽古してる時にね‥」
「‥柊といつの間にそんな仲良くなったの?」
私の言葉を遮って冷たい眼をする。
「仲良くって‥?本当に、いつも通り稽古して貰ってただけだよ‥?」
「‥本当に?」
「うん‥。」