私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第14章 稽古と嫉妬
「ふらついただけ。大丈夫、ありがとう。」
えへへ‥と申し訳無さそうに笑う私に、腕の力を緩めて安心した様に息を吐く柊。
「あ、ゴメン!重いよね」
私は思ったよりも密着している事に気付き、慌てて身体を離した。
「少し、休憩するか。」
私の体調を気遣ってベンチを指差す柊。
「そうだね。私、飲み物買ってくるよ。」
「悪りぃな。」
そう言って柊がベンチに向かう。
私は近くの自販機でミネラルウォーターを2本買って、公園へ戻った。
「お待たせ!はい、お水。」
ベンチに座る柊にペットボトルを手渡す。
「おぅ、ありがとよ。」
受け取った水を飲む柊の隣に、私も腰を下ろした。
「最近の学校はどう?」
「いつも通りだな。あー、あと‥相変わらず梅宮がうるせぇ。」
ハァと溜め息をつきながら頭を掻く柊。
「いつもお疲れ様。」
私の言葉にフッと笑う柊は、見た目がかなりイカつくて横暴に見られがちだけれど。実際は凄く神経質で、正義感が強くて面倒見が良い頼れる兄貴のお手本みたいな人。
つり目で、ギザギザした歯が笑うと可愛い。
「‥陽丘もだろ?」
お互いに昔から、はじめに振り回されている苦労人同士。
「‥私は慣れっこだから。むしろ最近は、私の方が振り回してるんじゃないかな?」
「いいんじゃねぇか?もっと振り回してやれ。」
椿やことはと同じく、気軽に何でも話せる存在。
「そうだね!」
私の言葉に、楽し気に笑う柊。
暫く他愛のない話をして笑い合って過ごした。
「‥そろそろ再開するか。」
「うん、よろしくお願いします。」
少し陽が落ち始めた公園で、稽古を再開して30分程。
「‥よし、今日はこの位で終わりにするか。」
ヘトヘトになった私に声を掛ける柊に、お礼を言う。
「ありがとう‥。」
それから公園を出て、すっかり暗くなった道を2人で歩いた。私の歩幅に合わせてさりげなくゆっくり歩いてくれる柊。
‥優しいね。
はじめと柊が出会ってくれて本当に良かった。色々と大変だった2人の出会いのエピソードを思い出してクスリと笑う。
商店街まではわりと近い公園。歩き始めてから10分程でポトスが見えてきた。
‥そのお店の前に佇む大好きな姿を見つけて、走ってその姿に駆け寄る私。駆け寄る私に気付いた姿‥はじめが、手元のスマホから顔を上げて手を振った。