私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第12章 再出発・動き出す恋
***
‥手元の線香花火が最後の火花を散らして私の足元に落ちた。花火の燃え殻をバケツに入れて、夜空を見上げると花火の煙が立ち上る空に、沢山の星々と綺麗な天の川が見えた。
幼い頃、大好きだった織姫と彦星の話を思い出す。
1年に1度しか逢えない恋人達。
昔は、"悲しい"とだけしか思わなかった。
けれど今、この歳になって思う事がある。
変わらずにずっとお互いを想い合って、待ち続けられるなんて素敵な事だなと。‥"家族"みたいだと、思った。だから、毎年七夕の日に見る天の川が大好きで楽しみになった。遠い空から私とはじめを見守ってくれている、大好きな家族との絆を感じられるから。
「‥ひまり、疲れてないか?」
そんな事を考えながら夢中で空を見上げていた私の肩に、上着を掛けながら隣に立つはじめ。
「うん、大丈夫。ありがとう。」
「‥なら良かった。」
「今年も綺麗に見えたね、天の川。」
「な!毎年楽しみにしてるもんな、ひまり。」
「‥うん。」
そんな会話をしながら‥こっそりした願い事。
"来年も、その先もずっとはじめと一緒に居られますように。"
‥私だって、ヤキモチ妬いたりするんだからね?
無邪気に笑う君は、私がそんな事を考えてるなんて知らないだろうけど。他人に分け隔てなく接する事が出来る優しい君だから、誰からも愛される。君は、誰にとっても太陽みたいな存在だから。‥私の事心配してるみたいだけど、私も同じだよ?君が心配。だから、想いが通じ合っても不安は尽きないし何度でも恋焦がれる。
‥困っちゃうな。
空を見上げるはじめの横顔を見ながら少しむくれる私。
そして、カバンに入っているプレゼントの事を思い出してはじめの横顔をチラリと見た。
子供達と施設長は花火に夢中でこちらは蚊帳の外。
‥絶好のタイミング。
「はじめ。」
「ん?どうした?」
私はラッピングされた小さな紙袋をはじめに差し出した。
「‥これ、記念日のプレゼント。」
はじめは驚いて一瞬固まった後、照れ臭そうに頭を掻きながら‥
「実は、俺も‥」
と、ポケットから小さな袋を私に差し出して来た。
今度は私が驚き、固まる。
「え‥」
‥数秒の沈黙。
お互いに嬉しいやら恥ずかしいやらでモジモジした後。
「「ありがとう。」」
と、一緒にお互いのプレゼントを開けた。