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私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】

第10章 七夕の夜



家なら高台にあるから見えるかも!と。突然の提案に面食らったが‥悪くない。

それにもう少し‥一緒に居たいから。

「それ名案!‥花火やりたい!」

私がそう言うと満面の笑顔で、はじめがよし!と手を差し出して来る。

「じゃあ花火買って帰るか!」
「うん!」

差し出されたはじめの手を握り、私も笑顔で頷いた。

それから花火を沢山買った私達は。
色々な種類の花火に心躍らせながらはじめの家に向かった。

***

ー30分後。
辿り着いたのは"風鈴園"と書かれた児童養護施設。はじめの家。私達に気付くと、中から数人の子供達が出て来た。

「はじめお兄ちゃん、お帰り〜!」
「ひまりお姉ちゃんもいる〜!」
「2人とも何持ってるの〜?」
「遊んで〜!」

あっという間に囲まれ、子供達に抱きつかれる私とはじめ。
私は、ここで月に2・3回お菓子作り教室のボランティアをしている為、子供達とは顔馴染みである。身動きの取れない私達の元へ、騒ぎに気付いた施設長もやって来る。

「お前たち〜、はじめとひまりが困ってるだろ?」

彼の言葉に、群がっていた子供達がしぶしぶ離れる。

「今からみんなで花火しようと思って買って来た!!あと、天の川観測会な!!」

自由になったはじめが、両手に持った花火の入った袋を子供達に見せてそう言うと、途端に目を輝かせる子供達。

「花火??」
「やった〜!!」
「早くやろ〜!!」

はしゃぐ子供達を連れてバケツや椅子を用意し始めるはじめ。その様子を笑顔で見守る私。

‥本当にいい"お兄ちゃん"だね。
いつの間にか私の隣には施設長がいて。2人で、はじめと子供達を見つめる。

「‥いい兄貴だな、はじめは。」
「はい‥本当に。」

彼は"施設長"で。施設"みんな"の父親。この施設は、はじめの家族が運営している訳ではない。

‥ここは、はじめが家族を亡くして辿り着いた場所だから。

「ひまり〜!花火始めるぞ〜!!」

はじめに呼ばれて子供たちの輪の中に入り、色とりどりの火花にはしゃぐはじめと子供達を見ながら私は線香花火を手に取って火をつけた。椅子に座って静かに火花を散らす花火をぼんやりと眺めながら私は、次第に小さくなる火花を見て静かに目を閉じた。

‥君が突然、私の前から姿を消した"あの日"。君の身に起きていた悲劇を思い出していた。



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