私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第9章 脱・お姫様[終]決行、陽の下(もと)へ
*はじめのひとりごと*
繋いだ手から伝わってくる、心地良いひまりの温もり。
自分の手にすっぽり収まる、小さくて柔らかい手。
七夕飾りの施された商店街を楽しそうに眺めながら笑顔で隣を歩くひまりを、こっそり見つめる。
小柄なひまりとは身長差がかなりある為、長いまつ毛や綺麗な横顔、コロコロ変わる表情が良く見える。
‥世界で1番可愛い、俺の彼女。
今日はいつもよりさらに可愛くて‥綺麗で。気付けばひまりから目が離せなくなっている自分。
大胆に両肩を出したワンピースから見える白い肌は、思わず触れたくなる程色っぽい。
華奢で細い手足。
風に揺れる度、いい香りがするふわふわで柔らかい髪の毛。
そんなひまりの全てが。
誰の目にも触れさせたくない程、魅力的で。
いつでも独り占めしたくなるから‥困る。
‥それなのに。
そんな俺の気も知らずにひまりはいつも無自覚で天然で。
純粋無垢で、危うくて目が離せない。
いつの頃からか、ひまりが自分以外の男や他人と仲良くしているのを見るのが嫌だと感じる様になって。
初めて抱いた感情が"嫉妬"。
‥ダサいな、俺。
そんな醜くくてダサい俺をひまりに知られたくなくて。本当は思いっきり愛情を伝えたいのに我慢して。
昔、言われた言葉を言い訳にして今までずっとカッコつけてた。
‥ ひまりの気も知らずに。
数分前に、ひまりの唇が触れた口元が熱い。急な不意打ちに、これまで必死に保ってきた理性が壊れかけて本当に‥焦った。
ひまりは、自分より大柄の男に立ち向かえるほど勇敢で。いつの間にか、俺の知らない間に強く逞しく成長していて。
‥あんな色っぽくて、大人びた顔までするようになって。あっさり心を解放させられてしまった。
正直、やられた‥と思う。
けど。
俺がひまりに思ってるように。ひまりが。
"自分だけに見せてくれる表情(かお)"を見たいと思ってくれてるなら‥。そんな俺に喜んで、嬉しいと思ってくれるなら。
ダサい自分も。
‥悪くない。
そして。
楽しそうに笑うひまりに。
密かに逆襲を決めた俺は‥君に内緒で小さく微笑んだ。