私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第9章 脱・お姫様[終]決行、陽の下(もと)へ
「奪われてなんかないよ?ずっと守られて幸せだった。」
だから‥そんな顔しないで。
私は、はじめを見上げながら微笑んだ。
「お姫様は‥嫌か?」
「うん。‥じっとお城で王子様を待つお姫様は嫌。」
私の言葉に頷き、そっか!と笑うはじめ。
「私も、大切な人を側で守りたいから。」
分かったと言うはじめが腕の力を緩めて私から離れる。
「‥そうだな!俺たちは"2人なら最強"だからな!」
夕陽に照らされたはじめの笑顔。
私にそう言ってくれた"あの日"と同じで。
‥嬉しかった。全部、ちゃんと覚えててくれた。
ホント敵わないな。
私の欲しい言葉を全部くれる。
‥悔しいから少し、意地悪するね?
「ねぇ、はじめ?」
「ん?」
「今日いつもと違うでしょ?私。」
「おう!すっごい可愛い!!」
いつも可愛いけどな!そう言って‥私の頭をポンポンするはじめ。
‥そう。
お姫様扱いも嫌だけど‥それ以上に子供扱いはもっと嫌な私。
だから。
私は背伸びをしてはじめの首に手を回して思い切り引き寄せて。お互いの唇が触れる距離までグッと顔を近付けた。
突然の私の行動に驚いて目を見開くはじめ。
私は硬直するはじめに微笑みながら目を閉じてその唇に‥
ではなく。
‥唇の横にキスをした。
そして耳元で。
悪戯っぽく‥ドキドキした?と、囁いてから離れる。
ーその瞬間。
耳まで真っ赤になって唇に手を当てた君の顔に、私はベッと舌を出して‥背を向けてひっそりと笑った。
やっと見せてくれた、私の知らない顔が‥可愛いくて。溢れる笑みを堪えながら、昔自分がはじめに言った事を思い出した。
".いつも王子様みたいにかっこいいはじめが好き"
だから君は。きっとそれを今でも貫いてくれているから‥照れ顔をあんまり見せてくれないんだよね?だけど、これからはもっと色んな顔を沢山見せてくれる様になって欲しいな。
そんな願いを胸に。
真っ赤になって私を見つめるはじめに、七夕飾り見に行こ!と笑いかける。
そして。
優しい夕陽に包まれて見つめ合いながら、どちらともなく手を繋いだ私とはじめの帰りを祝福するような優しい風鈴の音を響かせる商店街へと歩き出した。