私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第9章 脱・お姫様[終]決行、陽の下(もと)へ
それから私達は色んなお店を覗いてショッピングした。
楽しい時間はあっという間で、間もなく夕方。
はじめとの約束の時間が近くなってきた。
私は、休憩がてら入ったカフェでお茶をしながらスマホを確認する。
「そろそろ帰らないとね。梅と待ち合わせしてるんでしょ?」
「うん。時間に商店街の入口で待ってるって。」
ふーん?と嬉しそうな椿。
「梅、今日のひまり見たら可愛いすぎて気絶しちゃうんじゃない?」
「そうかなぁ‥?」
照れながら、注文したジュースを飲み干す私。
「‥プレゼントも喜んでくれるといいわね。」
私は、椿の言葉にアクセサリーショップで購入したお揃いのブレスレットを取り出す。
見つけた時、はじめに似合いそうだと思い‥購入するついでに色違いで自分の分も買ってしまった。はじめの瞳と同じ色のブルーの革で出来たシンプルなブレスレット。接続部分が細いチェーンで出来ていてお洒落なデザイン。制服にも合いそうで一目惚れした。今までプレゼントでアクセサリーを贈った事はなかったので少し照れる。
「‥うん。」
ニコニコ笑って見つめてくる椿に、私はバックからもう1つ別のラッピングされた小さな袋を渡した。
「アタシに‥?」
驚く椿に開けるよう促す。
袋に入っているのはピンク色の小さなダイヤが付いたピアス。
「色々付き合ってくれたお礼と、これからも宜しくの意を込めてのプレゼント。」
私の言葉に感激して涙ぐむ椿。
「アタシの大好きな色‥、ありがとう‥ ひまり。」
いつも沢山のものを貰ってばかりだから。
‥恩返しがしたかった。
プレゼントを胸に抱いて嬉しそうに笑う椿に、帰ろうと声を掛けて席を立った。
‥今日1日すごく楽しかった。
満足した私達はカフェを後にし、夕暮れの近づく繁華街を出て商店街に向かって歩き始める。
‥その時。
私は背後に数人の気配を感じて椿を見た。椿も気付いている様で、見つめる私に黙って頷いた。
毎年、夏のこの時期は行事が多い商店街にガラの悪い輩が頻繁にやって来ては騒ぎを起こしていた。恐らくはじめは、その見回りも兼ねて商店街に来るのだろう。
そんな事を考えながら、気付かないフリをして歩き続けている私達の背後に徐々に近付く気配。
間もなく商店街の入口という所で私は‥背後から肩を掴まれた。