私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第7章 脱・お姫様3 王子と姫の誕生秘話
この頃、椿の容姿は男子の制服を着た"男の娘"(おとこのこ)だった。
周囲にはなかなか理解されず、好奇の目で見られ虐げられる日々。
"好きなものを好きでいる"だけなのに。
椿は周囲の人間達と距離を置き、孤立し始めていた。
‥苦しかった。
そんな状況の中、一緒にいた私に被害が出る事を恐れた椿は次第に私とも距離を置くようになった。
その後すぐに椿が恐れていた事態が起きてしまって。
この頃から自分の身を守る為に、いちゃもんをつけてくる同級生や先輩達と毎日のようにケンカをしていた椿。はじめと同様にケンカの才能があり強かった為、どうしても勝てない卑怯者たちは椿と一緒にいた"私"に目を付けたのだ。
放課後、はじめを待っている所を数人の上級生に囲まれた。ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる彼らの手にはハサミ。
「君さ〜あのオカマとよく一緒にいるよね?」
近寄って来た男を黙って睨みつける。
「アイツの毛、長くて鬱陶しいから切ってやろうと思ってんだけどなかなか切らしてくんないからさ〜」
瞬間、目の前の男の意図が分かり‥逃げようとしたが遅かった。気付いた時には背後から2人の男に押さえつけられて身動きが取れなくなっていた。
「‥代わりにお前の毛を切ってお揃いにしてやるよ。」
私の顔の近くでハサミを動かして笑う男にそう言われて髪の毛を乱暴に掴まれた。
「‥触らないで!!離して!!」
必死の抵抗も虚しく私の毛は、雑にハサミを入れられ半分ほど切られてしまった。
‥無惨に地面に散らばったお気に入りの髪の毛。
彼らは悔しくて泣いている私を見てゲラゲラと笑いながら去って行く。髪の毛よりも、椿を貶(けな)された事が1番許せなかった。
そこへ待ち合わせ場所に来ない私を心配したはじめが来て。はじめがブチ切れて彼らの所に行こうとするのを必死に止めた。
次の日、教室に入った私の髪型を見て青ざめる椿。
「ひまり、それ‥」
「イメチェンしてみた!」
心配させないように笑顔で言ったが無駄だった。見た事ないくらい怖い顔をした椿に腕を掴まれ教室から引っ張り出される。
「‥誰にやられた?」
いつもの椿とは違う低い声に圧倒されて言葉に詰まっていたその時。
「おい!!ひまりから離れろ!!」
はじめの声。
私を背中に隠すように間に割って入り、椿を睨みつける。