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私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】

第6章 脱・お姫様2 男の娘(おとこのこ)



霊園から歩く事15分。
見慣れた一軒家が見えてきた。
嬉しくて小走りで玄関に向かう。

呼び鈴を鳴らして数秒後。

「はいはい、どちら様ですか?」と、祖父が出て来た。

「こんにちは!おじいちゃん久しぶり〜!!」

そう言って、私は祖父に抱きついた。

「おぉ〜!ひまりか!久しぶり、元気にしてるかい?」

おじいちゃんは驚いたあと嬉しそうに笑って抱きしめてくれた。

「うん、元気だよ!なかなか来れなくてごめんね‥。」
「いいんだよ、気にしなくて。元気なら良かった。さ、中に入って。暑かっただろう?アイス食べようか。」

うん、と頷き中に入る。

‥おじいちゃん少し小さくなった気がする。
背中を見て思った。

去年おばあちゃんが他界した。
私の両親に負けないくらい仲良しで素敵で。
憧れの夫婦だった。

おじいちゃんはおばあちゃんが大好きだったから亡くなった時はかなり塞ぎ込んでいて心配だった。

けれど数ヶ月前に風鈴高校のボランティア活動をきっかけに、また笑顔を取り戻してくれた。
それもこれもはじめ達"ボウフウリン"のおかげである。

でも、1番のきっかけを作ってくれたのは‥

"ピンポーン"

再び鳴った呼び鈴。

私は「はーい!」と玄関に戻って引き戸を開けた。

玄関を開けた私の目の前に立つモデルのような長身の美少女。

「椿(つばき)‥」

私が名前を呼ぶとニッと笑いながら‥

「ひまり、おひさ〜!会いたかった〜!!」

と、抱きついて来る。

「‥はじめに言われたの?」

はぁ‥と溜め息混じりで椿から体を離す。

「まあね。恐らくここに居るだろうからって。何があったかは知らないけど‥この世の終わりみたいな顔してたわよ?梅。」
「‥‥。」

椿は黙った私に困ったように肩をすくめると、カバンから見慣れたケースを取り出して差し出して来た。

トマト形の薬ケース。
私の物だ。
中にはいつも咳止めや解熱剤が入っている。

私、お店の机に置き忘れてたんだ‥。
はじめの顔がちらついて胸が痛む。

「これ、あんたに届けてって連絡があったの。」

ケースを受け取り御礼を言う私のおでこに手を当てて笑う椿。

「うん!今のところ熱もなさそうだし‥顔色も良いわね!」

うんうんと1人で頷き、ニッと見つめてくるこの美少女が祖父の笑顔を取り戻してくれたきっかけ人である。

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