私の陽だまりくん(前編)【WIND BREAKAR】
第5章 脱・お姫様1 過去
私の両親は私が9歳の時に事故で他界した。
雪の降る‥クリスマスだった。
この日、体調が優れなかった私は両親と一緒に出掛けらず留守番を任されていた。ベッドから窓の外で降りしきる雪を見ながら、プレゼントとクリスマスケーキを買いに行った2人の帰りを祖父母とワクワクしながら楽しみに待っていた。
ーその帰り道での事故だった。
雪でハンドルを取られたトラックに正面から突っ込まれ即死だったと後で聞いた。
この年は、はじめ達が音信不通になってしまったり体調が悪化して学校にも行けずにいたので落ち込みがちで。
塞ぎ込んでいた私を喜ばせるために、両親が祖父母も交えてクリスマスパーティをする計画を立ててくれたのだ。
病院からの悲報の電話に泣き崩れる祖父母。
最初は2人が何を言っているのか、何が起きたのか分からなくて。
ただ立ち尽くしてぼんやりする事しか出来ずにいた。
‥そこから先は早かった。
あっという間に葬儀が終わり、遺骨になった2人を抱えさせて貰った時にようやくこれが現実なんだと分かって。
ずっと理解が追いつかずにいた私の感情はその瞬間に爆発し声を挙げて泣き叫んだ。
両親がもう"いない"という悲しみと絶望感に耐えられなかった。
祖父母は泣き叫ぶ私を抱きしめて。
一緒に泣いて。
落ち着くまでずっと側にいてくれた。
"私たちがいるからね"
どんな慰めより効果のある言葉だった。
私は2人のおかげで立ち直れて、今こうして幸せに包まれてる。
"ひまり、ひまりは1人じゃないからね。"
亡くなった両親がよく言ってた。
周りには家族や友達がいたから当たり前だと思っていたけれど。
‥ホントだね。
今ならその意味が良く分かるよ、お父さん、お母さん。
ありがとう。
***
優しい風が吹き抜ける霊園を静かに歩いていた。
ゆっくり歩いて‥”陽丘家"と彫られた墓石の前で足を止める。
去年、祖母が他界し現在は3人が眠る場所に、途中の花屋で買った花束を墓前に供えて手を合わせた。
"私は今年も幸せだよ"
そう心の中でそっと呟き、目を開く。
"また来るね"
‥合わせた手を振って立ち上がった私は祖父の家に向かって歩き出した。