第1章 北風
sideつばき
あたしたちがお祭りに行きたいって言ってのを聞いていた二人が、一緒にお祭りに行こうって言ってくれて4人で少し離れた神社に歩いて出かけた。
屋台を回ったけど、サンマをたくさん食べたせいかあたしたちは全然お腹が空いてなくて結局何も買わずじまいだった。
それでも夏の終わりを満喫できるこのお祭りの雰囲気は楽しくて、あんずと一緒にこれたのは久しぶりで、すごく楽しかった。
打ち上げ花火が始まるアナウンスで、学生のとき2人でよく見ていた丘に移動して、いいポジションに4人で並んだ。
両端に青峰さんと涼太
その間にあんずとあたしが挟まれるように並んで右側には涼太がいた。
最初の花火が打ち上げられて、拍手や歓声があちこちから響いた。
花火が大好きなあんずはすごくい顔をしててニコニコ笑って手を叩いて喜んでた。
そしてあたしがあんずを見てるのと同じように、青峰さんがすごく優しい顔であんずを見てた。
ホントに愛されてるあんずが少しだけ羨ましかった
花火に視線を戻して空を見上げていると、右隣からトントンと肩を叩かれて手招きをされた。
何がしたいのか分からなかったけど、涼太に着いていくとあんず達から少し離れた所で足を止めた
「ちょっとだけ、2人っきりにさせてあげたいと思うんスけど、俺と2人は嫌?」
「あっ…いえ…嫌なんて全然…わたしと2人じゃ楽しくないと思いますけど…」
嫌だなんて滅相もない。
少しだけしか話してないけどその時あたしは涼太を嫌いとか、一緒にいたくないとかは思わなかった
「そんなことねっスよ。1人で見るより2人のが絶対楽しい」
テレビとか雑誌とかで見るよりも無邪気で表情豊かで、プライベートでもイケメンオーラビシバシ出してるのかと思ったけど全く真逆だった。
それでも隠し切れないオーラはあるから、いろんな人に声をかけられていたけど、自分は黄瀬涼太じゃないって言い張っててそれが面白かった
「じゃあ、夏の思い出に一緒に…」
「夏の思い出ってなんかいい響きっス」
あんずの実家にいた時は何を話していいのか分からなくて会話が全く続かなかったけど、半日経って夜になる頃には自然と会話が弾んで、彼が超人気モデルだということなんて意識からすっぽりと抜けてしまっていた