第1章 北風
side黄瀬
俺とつばきはこうしてきゅーちゃんの実家で初めて顔を合わせた。
つばきは俺の周りにいる女の人達とは全然違ってて、きゃぴきゃぴ騒いだり質問攻めにしたりはしてこない。
九ちゃんと青峰っちが仲良く寄り添うのを羨ましそうに見て、嬉しそうに笑うけど、どこか寂し気な顔だった。
全く話しかけられないってことは今までなかったから、俺のことが苦手なのかなって思ってたけど、俺が話しかけるとちゃんと答えてくれて少し笑ったりしてくれた。
「きゅーちゃんとはいつから友達なんスか?」
「きゅーちゃん?」
「ほら、いちじくって苗字は漢字だと九でしょ?」
「あー。あんずは中学の時同じクラスになって、高校までずっと同じでした」
結構長いこと仲良しなんスね
ってことは俺らと同い年なんだ。
「黄瀬さんは…青峰さんといつからお友達なんですか?」
多分この子…
俺に全く興味ない…(笑)
質問には答えてくれるけどこの子が聞いてくることは俺の聞いたことをそのまま質問返ししてるだけ。
知りたくて聞いてるってより、会話がなくて気まずくなるのが嫌だからって感じ。
会話が途切れそうになると、丁度飲み物を持ったきゅーちゃんと青峰っちが戻ってきて、パパさんはもう飲んでるのか結構いい感じになってる。
焼いてもらったサンマを食べて、つばきときゅーちゃんが夕方でまだ全然明るいのに線香花火を初めて、そのうちにどこかから花火の音が聞こえてきた
「あ、今日お祭りだね」
「あ、そっか。あのちょっと行ったとこの神社に提灯あったもんね」
23区から少し外れたここは、昭和のかけらが所々に残っていて小規模なお祭りもあるんだってパパさんが教えてくれた
「「行きたいねー」」
俺らがいてもきゅーちゃんとつばきは二人だけでずっと話してて、俺と青峰っちは結構ほったらかしだった。
「お祭り…行くっスか?」
「行くって、お前ヤベェだろ」
「キャップ被って堂々としてれば、そっくりさんぐらいにしか見えねぇっスよ」
「お前がいいなら、行くか」
青峰っちはお祭りとか全然好きじゃないのにきゅーちゃんが行きたがると連れて行ってあげるらしい
ホント、優しいっスわ…