第4章 朝陽
sideつばき
涼太のキスも、あたしに触れる指先も、かかる吐息も
全てが優しい
前の人に、こんな風に大事にされたことなかった
こんなにたくさんキスをしてくれて、髪を撫でられながら抱きしめてくれたことなんて一度もなかった
「つばき…ホント、可愛い」
涼太からは何度も聞かせてもらっている“可愛い”も
「…愛してるよ。つばき…」
何度聞いても痺れるような甘い“アイシテル”も
全部全部、涼太が初めてだった
触れては離れて、離れては触れてを繰り返す柔らかい唇と合間にささやかれる甘い言葉は、あたしの心の扉を無理に開くんじゃなくて、あたしが開くまで、ずっとずっと待っていてくれた
怒ることも、呆れることも、責めることもなく
ただひたすらに、優しい言葉と愛情だけを伝えてくれた
「…りょうた……」
「ん?」
やまないキスの雨と頭を撫でてくれる優しくてあったかい、大きな手
男の人の手とは思えない柔らかさは、涼太の心をそのまま表してるみたいだった
「すき…」
「俺もめちゃくちゃ好きっスよ……絶対、俺の方が好き」
「そんなことないもん…あたしの方が好き」
絶対絶対あたしの方が好き
でも………
涼太も同じくらい好きでいてくれたら
どれ程幸せだろう
「俺。絶対俺のが好き」
「あたしなの……」
こんなこと言いあっても気持ちなんて計れない
だけど、こんな幸せな言い合いは他にない
肌が触れあってるところから涼太を感じて、さっきまでの刺激の余韻を忘れさせてくれない
きっとあたしが涼太の髪をギュっと掴んじゃったから、止めてくれたんだよね
だけどね……
こんな言い合いをやめるのは本当に勿体ないんだけど
今は、もっと触れてほしい
もっと触れたい
ずっと触れていたい
もっともっと深く
優しいあなたに触れてほしい
優しい手と全身で、あたしに触れてほしい
「だから、俺だって」
「…じゃあ……教えて?
涼太のこと……全部全部…おしえて」
あなたに丸ごと愛される幸せを
もっともっとあたしに教えてください。
「つばき……」