第4章 朝陽
side黄瀬
「涼太……すき…」
つばきはラブシーンとかも苦手だから、見たくなくてそうしてるのかと思った
だけどなんとなく雰囲気が少し違って、さっき言ったことを盾に確かめることにした
「手……離したら、映画見せないって言ったっスよね?」
「ん…………暗く……して…」
暗くしてってお願いはもう何度も聞いてきた言葉だから、意味を間違えてるなんてことは絶対にない。
つばきが俺とキスより先のことをするときは、いつもこの言葉が合図だった。
テレビの電源を落とすと、もう外も暗くなっていたからなのか部屋の中は真っ暗になって、音もすべて消えた。
ぎゅっと俺の胸に抱きつくつばきをゆっくりと撫でて、また指を絡ませた
「りょうた……好き……」
「つばき……愛してるよ」
甘くてゆっくりで、いつもよりも小さな声だけど、いつもよりも吐息が熱い
顎を支えて唇を重ねると、つばきの細い腕が俺の首に巻きついて、体が隙間なくくっつけられた。
背中にそっと手を滑り込ませて触れた肌は、緊張のせいか少しだけ汗ばんでいて、それが余計に色っぽくて……
つばきが撫でられるのを好きだって言う骨盤を、浮き上がる形に添ってそっと撫でた
「っ……っふっ…はっ……」
やっぱり声は我慢してる。
だけど息を止めることはしなくなっていたから、声を出していいとは言わないことにしてる。
つばきは“声を出していい”が“声を出せ”に聞こえちゃってるから、つばきがしたがらないことは絶対にしない
「息、苦しくないっスか?」
顔や頭、口を押える華奢な手、露出されていてキスができるところすべてにキスをしながら骨盤を撫でる手を止めずに、できるだけ小さい声で聞くと、もっともっと小さい声だけど返事をちゃんとくれた
「ぁっ……はぁ……苦しく…ないっ」
この会話は俺たちだけの秘密の会話
他の誰にも聞かせたりしない
「苦しくなったら、いつもと同じように教えて?」
苦しい、嫌だ、やめて、休憩したい
言っちゃいけないことなんて一つもないのに、拒絶を許されなかったつばきはそれを言葉に出せない
だから、それは言葉じゃなくて合図して教えてもらうことにしてる