第4章 朝陽
sideつばき
あたしも涼太もシンプルなデザインが好きだけど、涼太が選ぶものとあたしが選ぶものは金額が全然違う
「高すぎだよ‼‼ソファが350万って普通じゃない‼車じゃないんだよ?!」
「4万のソファっていったい何でできてるんスか⁉ちゃんと見て‼」
「ねぇあんず‼どう思う?!こういう人‼‼金銭感覚おかしいっ!」
「青峰っちもなんか言って!」
「「今ジャングルキング見てるから後にして(しろ)」」
“赤ちゃんライオン可愛いー”
“ここはこのチビのオヤジがイケてるとこが見せどころじゃねぇの?”
“えー、違うよ。赤ちゃんライオン可愛いしかないところだよ”
“デカくなったら可愛いじゃ済まねぇぞ。つかオヤジライオンイケメンだな”
“赤ちゃんライオン可愛い”
“お前さっきからそれしか言ってねぇじゃん”
悩んでるときは本当に真剣に聞いてくれるけど、そうじゃないといつもこう。
だけどこの二人を見てるとソファは涼太の意見を聞いてあげた方がいいのかなって思う気がしなくもない。
さすがに350万はたかすぎるからもう少し考えて欲しいけど…
大きくて質のいいソファで二人で寝転がって、映画館さながらにポップコーンをつまんでお互いの口に入れ合って、たわいもない会話をしてる。
「アーツネンガーってどういう意味だと思う?」
「どう聞いたってツネンガーじゃなくてツベンニャーだろ。ありゃ意味はねぇな。雰囲気だよ。俺のチビはかわいいだろー的な」
「え、でもツネンガー言ってるのマンドリルじゃん」
「ちげぇよ。歌ってんのマンドリルじゃねぇじゃん」
「あ、そっか。大輝も赤ちゃんできたらツネンガーしたい?」
「だからツネンガーじゃねぇって。実際ツベンニャーは言わねぇけど内心はツベンニャーするかもな」
何の脈絡も決着点もないこの二人の会話
意味が全くないように感じるのに、二人は本当に楽しくて幸せそうで、家具がどうとか家がどうとかよりも、二人がリラックスして過ごせるって事が一番大切なんだって教えてくれてるみたいだった。
普段から上質なものを選んでる人が、あたしに合わせていたらリラックスってできないのかもしれない。
寝室はあたしの好きにさせてくれるって言ってるんだから、リビングは涼太の好きな空間にしよ……