第3章 escada
side黄瀬
「一緒に…暮らしてくれる?」
「一緒に、暮らしたいです。……けど、涼太はお仕事平気?」
「平気っスよ。彼女がいることをとやかく言われるようようなやり方はしてない。同棲は一応報告しないといけないけど、プライベートまで管理されるような適当なことはしてない」
俳優とかモデルは人気商売だから、プライベートでだらしないことが報道されるのはやっぱりよくない。
だからしょっちゅういろんな子とすっぱ抜かれる後輩とか女癖が悪い先輩とかで仕事も成果が悪いとプライベートを管理されてる。
やると決めたら曲げちゃいけないってことを黒子っちから教わったから、モデルを職業にするって決めた時、仕事で手抜きは絶対しないって決めてた。
適当とか中途半端が一番ダサいって思ってるから、仕事もつばきのこともそれだけは絶対にしない。
「ほんと、涼太はかっこいいね」
見た目でキャーキャー騒がれて、かっこいいって言われることはあったけど、実際あれはそんなに嬉しくなかった。
こうやって俺の内面をちゃんと見て、そこをかっこいいと思ってもらえることが、俺にとってはめちゃくちゃ嬉しいことだった。
職業柄外見も大事で、いい造形で産んでくれた両親のお陰でこの仕事ができてることにはもちろん感謝してる。
だけど、そこだけしか見られないことは俺にとっていいことだとは思えなかった。
60歳とか70歳になった時、大事なのは外見より中身。
人間力を付けたいと思う俺にとって、中身をちゃんと見てくれているパートナーは何よりも大切だった。
いいところはいい、悪いところは悪いってはっきり言ってくれる対等な関係が築ける相手。
つばきしかいない
この先の人生ををつばきと一緒に生きていくこと以上に価値のあることなんてないって本気で思える。
「挨拶行かせて。つばきのご両親に、ちゃんと挨拶して、許可貰ってから一緒に住みたいんスわ」
「嫌じゃない?」
「嫌な訳ないじゃないっスか。俺に、ちゃんと筋通させて」
同棲なら挨拶はいいかって人は多いと思うけど、俺はそう思わない。
人様の大事な娘さんと一緒に暮らすなら、自分は腹を決めてますってことをご両親には伝えるべきだと思ってる