第3章 escada
sideつばき
まさか涼太から両親に挨拶をしたいと言われるとは思わなかった。
やっぱり付き合ってる相手の親っていうのは気も使うし、大歓迎って存在でないことは誰にとっても普通のことで、同棲で挨拶をしたっていうのは青峰さんくらいしか知らなかった。
「ご両親に、都合のいい日程を何日か聞いて欲しい。仕事のスケジュールと調整して、近いうちにちゃんとしたい」
涼太と真剣な話をすることが今までだってあったけど、今の涼太の顔は見たことがないほど真剣で、優しかった。
何年も前のことが原因のPTSDで涼太を受け入れられないあたしを、大きな優しさが包んでくれた。
「聞いておくね。……私もご挨拶に行きたいから、涼太のご両親にも予定聞いて欲しいな…」
「来てくれるんスか?」
「勿論。ちゃんとご挨拶させてください」
涼太だけ挨拶してあたしがしないなんておかしい。
それに、あたしだってちゃんとさせて欲しい
お仕事が大変な涼太のことをもっともっと理解して、安らげる場所を作りたい。
与えられてばっかりじゃなくて、ちゃんと涼太をささえられる存在になりたいって気持ちをご両親に伝えたい。
あたしの体の問題は見通しが全く立たないけど、あたしたちの関係は少しづつ進んでいて、涼太と二人の未来が少しずつ現実味を帯びていくことに確かに喜びがあった
午前中から話し始めたのにすでに時間は夕方で、これ程たくさん話ができたのは初めてだったかもしれない。