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北風と太陽【黒子のバスケ】

第3章 escada


side 黄瀬


病院にもう行ってるって……
一瞬にして全身の血の気が引いていく。

健康だって言い張ってたのに病院に“行った”じゃなくて“行ってる”って、どっか悪くなかったら通う必要なんてない。


「…いつから通ってるんスか?」

「涼太が出国した日から、週に2.3日くらいのペースで通ってる」


週2.3日って……それ、全然大丈夫じゃない。




「……どこが、悪いんスか?」


喉がつかえるような、締め付けられるような苦しさで、背中には冷や汗が出てるのに、口はカラカラに乾いている。


もしつばきの命に関わる病気だったら
もう長く生きられないんだって言われたら…

聞きたくない……けど、聞かずにもいられない。



握りしめた手にグッと力を入れてどんな言葉が出てくるのか、どうか命に関わるようなことではないことを祈りながらつばきの言葉を待った。












「体が健康っていうのはホント。あたしが通ってるのは……心療内科なの」



心療内科ってことは、つばきの問題は体じゃなくて心って事か…






よくないけどよかった
いなくなってしまうんじゃなくて本当によかった




「つばき」

「ん?」

「体が何ともなくて、ホントよかった。つばきにいなくなられたら、俺耐えらんない」


心が傷ついてることだってちっともよくないけど、心の問題なら一緒に解決していくこともできるんじゃないかって思えた。

自分がどれだけのことをしてあげられるかなんて分からない

だけど俺はつばきが好きで大事で、SEXできないからって他の女がいいなんてこれっぽっちも思わない。


この先も健康で一緒にいられるならずっと二人だっていい。
二人で一緒にいられるなら、なんだっていい。



「ごめんね。心配かけちゃって……本当にごめんなさい」

「いいんスよ。健康ならそれで。本当に、それだけで俺はいい」


申し訳なさそうにうなだれるつばきをそっと抱きしめると、何度も深呼吸をしながら、伝わってくる心拍数がみるみる上がっていくのをはっきり感じた




「話を……聞いて欲しいの」

絞り出される震えた小声

俺から離れて隣に座り直すと、手が真っ白になるほど強く握って、反対の手で手の甲をつねるように両手を重ねた。
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