第1章 北風
side黄瀬
世間とはズレて取れる俺の夏休み。
バスケはずっと趣味で続けて、オフになると大体青峰っちに相手をしてもらう
NBAを目指して渡米した青峰っちは故障が原因でバスケ選手を引退せざるを得なくなって帰国。
すっかり表舞台からは身を引いたけどバスケから離れられた訳じゃない。
バスケで稼いだ分は未来のバスケ選手に投資するって、全国から集まるユースたちを育成する日本初のプロバスケ選手の育成アカデミーを設立して理事長兼ヘッドコーチになった。
バスケのコートの維持や運営にかかる莫大な費用は、赤司っちの企業をはじめとした名だたる出資者からの寄付で賄われていて、俺もわずかだけど寄付させてもらってる
勿論、現役NBAの火神っちも、今はお医者さんの緑間っちも、パティシエで超有名になった紫原っちも、都庁で子供育成事業に奮起する黒子っちも、みんながそこに寄付をして未来のバスケ選手育成に期待をしてる。
結局俺らはいまだにバスケで繋がっていて、知り合った時よりも会う時間は少なくても、ずっと濃い関係を築けてる。
青峰っちとの1on1は全く勝てない。
いくら現役じゃないって言っても、NBAでやってコーチをしてる人に勝つなんてのは普通に無理。
だけどすげぇ楽しくて、取り繕ったりしなくていいこの人との関係は俺にとってはめちゃくちゃ居心地いい。
「もうギブ……疲れたっス……」
「お前体力ねぇなぁ。ま、本業忙しいししゃーねぇな。この間の火神の試合の録画うちにあっから見てくか?」
「え、きゅーちゃんいいんスか?」
「見たらすぐ帰れ」
今日だって本当は彼女と過ごしたかったんだと思うけど、バスケの誘いに乗ってくれた。
ホント分かりにくいけど優しい男っていうか…
「いーなー青峰っちは」
「はぁ?」
「束縛しない面白い彼女がいて」
俺は束縛とかされんのは無理
仕事柄女の人とご飯とかも行かなきゃいけないし、逐一報告とかはしてられない。
束縛が嫌っていうより、いちいちそういうことまで細かく説明しなきゃいけない信頼の薄い関係が嫌だ。
「本気で惚れたら……束縛も嫌じゃねぇよ。お前は色々しがらみがあって面倒なこともあんだろうけど、惚れた女に縛られんのは全然苦にならねぇ」
「え、束縛されるんスか?」
「いや…まったくされねぇ」