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北風と太陽【黒子のバスケ】

第3章 escada


sideつばき

ちゃんと話そうと決めたものの、やっぱり緊張はするし、ペラペラと楽しくおしゃべりをするのとは全く違う。

分かりにくくならないように、自分の中できちんと整理して、順を追って話せるように

自分の人生で一番の恥だと思うことをこの世で一番好きな人に話すということは想像よりもずっとずっと苦しくて、眠ることができなかった。


目を閉じても眠ることができないまま朝を迎えて、13時間の時差がある国から帰国した涼太は時差ぼけのせいでまだぐっすり寝てる。



いつもなら先に起きた方が後に起きる方を待つか起こすかだけど、今日はあたしだけ先にベッドを抜け出した。


シャワーを浴びて気分を少しすっきりさせて、涼太が起きたら一緒に食べられるように、朝食の準備を始めた。


涼太の朝食の好みが和食だって聞いたときはギャップに驚いたけど、だし巻き卵を美味しそうに食べてくれる涼太の姿にキュンとして、寝坊したときに慌てて作ったじゃことわかめの混ぜご飯のおにぎりは今ではリクエストされるくらいで、涼太のお家に泊まったら朝は一緒に和食の朝ごはんっていうのはもう定番だった。

日本人だから和食が合ってるなんて言ってるけど、あの長い手足とバランスのいいスタイルは日本人離れしてる。

涼太のことを考えながら、これから話すことでこの幸せが壊れてしまうんじゃないかって不安はない訳じゃない。

だけど隠していたって問題は解決しないってことはもう分かり切っていた。

問題から目を背けるのは簡単だけど、それじゃ何も変わらない。

それに、今まで急かしたり責めたりなんて一度もせずに、ずっとあたしを大切にしてくれてる涼太には知る権利がある。



頭の中で話を組み立てて、押し込めていた記憶を一つ一つ取り出して………











「痛っ‼‼」



はぁ……やっちゃった……


ただでさえ不器用だというのに考え事なんてしてるから

切れたところは少しだけどやっぱりそれは痛い。
じわじわ滲み出る血を洗い流して絆創膏を貼った。



心の傷にも、絆創膏が貼れたらいいのに…

この指の傷と同じように、貼り替えてるうちに跡形もなく消えてくれたらいいのに…


心は自分が思うよりもずっとずっと傷つきやすくて、治りにくいんだってことを嫌って程実感した
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