第3章 escada
side黄瀬
少し痩せてはいたけど食欲もあって顔色も悪くはないから、少しだけ安心した
風呂から出て二人で一緒に寝室に入って…
今日は本当に何もしない。
抱き締めてキスして寝るだけ。
「涼太……大好き…です」
「俺は………愛してる」
この気持ちは付き合って初めて抱こうとした日からずっとあった。
だけどこの言葉口にするのはやっぱ照れくさい
でも今は、照れとかそんな事どうでもよかった。
何があっても、どんなことがあっても俺はつばきを愛してる。
一目惚れとかビビットきたとか、出会いに運命的な何かがあった訳じゃないけど、俺はつばきに湧き上がるような愛情を確かに感じてた。
初めての感覚
腹の底から溢れてくる
離れるなんて考えられない
生まれて初めて口にした言葉は、言おうと意識したんじゃなくて本心が勝手にこぼれたって表現の方が正しかった。
「そんな……言われたの、初めて」
手で口元を隠して暗がりでも分かるほどびっくりした顔をして俺を見てる。
初めて…か。
俺も言うのが初めてで、つばきは言われるのが初めて
なんか好きな子のハジメテって、めちゃくちゃ嬉しい
だけど、2年以上一人と付き合ってて言われたことがないって、すっごい硬い男だったか…
大事にされてなかったか
前者ならいいと思うけど、後者ならすげーヤダ
だけど、SEXが嫌いって事や、別にモテない訳じゃなさそうなのに彼氏がずっといなかったことを考えると、多分後者なんだろうな……
つばきが大事にされて、いい恋愛をしてたら、今頃俺は付き合えてないのかもしれないけど、雑に扱われて、傷ついてたのかなって考えるとそれはそれでめちゃくちゃ嫌だ。
「愛してるよ。つばきの事……めちゃくちゃ愛してる」
「りょうた……」
俺に顔を押し付けて、くぐもった声でも分かるほど涙声
でもその声すら可愛くて堪らない
「泣いちゃうの?」
「っ…うれっ……しかったの…っ」
泣くほど嬉しいなんて思ってくれて、俺の方が嬉しい。
だから二人で乗り越えていけばいい
体でもメンタルでも、その両方でも。
どんなことがあっても俺はつばきを愛してるから