第3章 escada
side黄瀬
いつもと同じように一緒に湯船に入って抱きしめると、さっき感じた痩せたかもって感覚は気のせいなんかじゃなかった。
ごめん……
俺がもっと頼れる男だったら、こんな風にならなかった。
前回一緒にお風呂に入った時よりも華奢になった肩にキスをすると、相変わらず可愛い顔をして俺に振り返ってくれて、キスのお返しをくれた。
キスとお風呂は本当に嫌じゃないっぽい
体かメンタルか……
どっちも嫌だけど、命に関わるとかだったら体の方が嫌だ。
今ここで話してつばきに余計な不安を与えてしまえば、今夜眠れなくなって明日話ができなくなる
一刻も早く切り出したい気持ちを押さえつつ、肌の触れ合う久しぶりの感覚に浸ると、自然と仕事の疲れが癒されていった。
「つばき?」
「なぁに?」
「ちゃんとごはん食べてる?」
食べれていないなら、今日はもう遅くて行かれないけど、明日か明後日にでも個室で落ち着けて、人目の気にならないお店で好きなものを食べれるだけ食べさせてあげたかった。
「食べてるよ。今日もね、あんずと一緒にご飯食べに行ったんだ」
「食べてるならいいんだけど…ちょっと痩せたっスね」
誰のせいでこうなってんだって言われたら、返す言葉もないんだけど、やっぱ心配で言わずにはいられなかった。
「うん…少し減ったかも。でもほんとに食べてるよ」
「明日か明後日、外にご飯行かねっスか?つばきの好きなもの。なんでもいいから」
「え、大丈夫なの??」
「個室あるとこになっちゃうけど、社長には彼女がいるってことはちゃんと報告してあるから大丈夫」
社長もマネージャーも反対はしてないけど、やっぱり一般人の彼女だと、撮られたり噂になったりしたときに大変なことが降りかかるのは彼女の方だからって事で今はまだ公にはできない。
俺としては、今すぐにでも言っちゃいたいんスけどね…
やっぱ仕事はちゃんとしたい
「じゃあ…行きたい」
「何がいい?」
「んー……お肉」
お肉って答えるってことは、食欲がない訳じゃなさそう。
つばきは具合が悪かったり食欲がなかったりすると蕎麦とかうどんとかの全く具がない麺類しか食べない。
それも半分も食べずにもういらないって言って食べなくなる。