第2章 糸口
side黄瀬
つばきは泣いてない?
つばきはちゃんとご飯食べた?
つばきは今日寝れそう?
誰もいない静かな家で考えるのはつばきのことばっかりだった。
俺の仕事柄、終わりの時間がズレることもあって、外で待ち合わせてデートとか、予約して美味しいところでご飯とか、ほとんどできてない。
オフだって人目があるから買い物とか一緒に出掛けられなくて、二人で一緒にノートパソコン見ながらネットショッピング。
届いたものがイメージと全然違って笑ったり、思ったよりもいい感じだったことに喜んだり…
俺は一緒に過ごせる時間が楽しくて幸せだったけど、つばきは色々不満があるから…でも、そういうの俺に言えなくて我慢して、そのせいでSEXしたくないって体が拒否してるんスかね……
良くも悪くも、オンナノコの体は正直だから…
青峰っちとは中学の時からバカみたいにおっぱい談義したり、ネットやらテレビやらで仕入れたテクニックがどうたらこうたらって話はしたけど、こんな具体的に生々しい相談をするのは初めて。
いくら仲が良くてもSEXの具体的なことを話すなんてしない
SEXは自分と彼女との秘め事で、ペラペラ話していいことじゃない。
相手が大事なら尚更で、青峰っちもきゅーちゃんとはしょっちゅうしてる感じはするけどいつしたとか内容とか、そういうことは絶対言わない。
つばきとのことを他の男に話すなんて本当なら絶対嫌だけど、もう自分だけではどうしようもなかった。
青峰っちは普段はふざけてるしバカな下ネタとかも言うけど、こっちが真剣に聞いてるときは絶対茶化さないし口外もしないって知ってるから相談できる
例え青峰っちに話すとしてもつばきを傷つけることだけはしたくなくて、言葉を考えながら、つばきがどうしてるのか気になって、連絡をしようか迷っているとチャイムが鳴った。
エントランスのじゃなくてドアのだから多分青峰っち
その場から立ち上がってドアスコープを覗くと案の定で、オートロックを解除して部屋に入れた。
「ひでー顔。よくそれで今日の仕事終わったな」
「NG連発…予定より3時間遅れっスよ…」
ホント情けない。
つばきのことも、仕事のことも