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北風と太陽【黒子のバスケ】

第2章 糸口


said 黄瀬

何とか仕事はこなしたけど…

この後青峰っちと話せるからまだマシとはいえ、気分は最悪だった。


悩んでんのはつばきなのに…



一緒にゆっくり解決してこうって言ったのに、他の女としていいって言われて思いっきり怒った。


あー…ホント…俺何やってんだ…
いつもいつも俺を好きだって態度で示してくれてるつばきのあの言葉が本心じゃないなんて普通に分かるのに、すっげームキになって怒っちゃった。


そんで何度も謝らせちゃって、結局朝は気まずそうに目を泳がせてた。



「ごめんなさい…行くね…」


いつもは朝仕事に行くとき“行ってきます”って笑って出て行ってくれたから、あの苦し気な声が、もう来ないって言ってるように聞こえて、咄嗟に腕を掴んだら振り向いた顔は今にも泣きだしそうだった。

遅れちゃうから…って小さく言われて渋々離したけど、マネージャーが迎えに来て移動中に来たメッセージで体調が悪いから今夜は自分の家に戻るって言われて、仕事に行かせなければよかった…なんて考えた

だけどつばきに仕事を休ませたところで、結局俺は現場に穴をあけられないから一緒にもいられない

こういう時本当にこの仕事が嫌になる

サラリーマンがいつでも休めるって思ってる訳じゃないけど、こういう時は少しでも早く仕事を切り上げたり、予定を少し変更したりして早く帰るとか、できることがあるのは羨ましい。

俺は完全に使ってもらう側の人間で、プライベートが絶不調だろうが決められた予定は必ずその日に終わらせないと帰れない。


つばきが不調なのはきっと体じゃなくて心の方

俺と会う気分にはなれないんだってことは聞かなくても分かった。
嘘はマジで嫌いだけどこれは嘘ってよりもつばきの意思表示だって思ってるから昨日みたいな怒りはなかった。


本当ならつばきが“おかえり”って笑って出迎えてくれるはずだった自分の部屋に入ると、めちゃくちゃ泣きたくなった。

いい歳してだらしないって思われても…


好きな人をあんな風に怒って、追い込んだ自分が情けなくて…
思いつく限りのことはしてきていても一向に解決しない問題に、自分じゃつばきを幸せにはできないんじゃないかって不安が押し寄せて

もう一歩も歩く気が起きなくて、ズルズルとその場に座り込んだ
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