第2章 糸口
sideつばき
あたしは涼太と何度もできないことを繰り返してはいたけど、できなかった後はいつも涼太と話をした。
イクって感覚を知らないことや、それを目的にされるのが嫌なこと、今はまだ体を見られるのも声を聞かれるのも恥ずかしいから、全部脱がさずに、そっとやって欲しいこと。
涼太はいつもそっと優しくやってくれていたけど、声が出ないなんてことはなくて、いつも枕にしがみついて声をその中に閉じ込めてた
全部全部あたしのしたいようにさせてくれた。
それなのに…できなかった。
そして昨日はソファでいつもよりもくっついていて、そのうちにそういう雰囲気になって、今日こそはって思ってた。
だけど、あたしはベッドに連れていかれたときには全く濡れていなくて、結局いつもと同じだった。
涼太はいつもと変わらずに優しく抱きしめてくれたけど、あたしは涙が止まらなくて涼太を困らせてしまった
自分にできない原因があるのに、あたしは泣くことしかできなくて、焦らせちゃったねって優しくなでてくれる涼太にとんでもないことを言ってしまった
「あたし…きっともうできないだろうから……違う人と…してもいいよ」
本当はそんな事嫌で嫌でたまらないのに、SEXもせずに彼女面をしてる自分が最低な人間に思えた。
だけどそれは却って涼太を怒らせた
「今のは……許さねぇ」
聞いたことのない低いとげのある声
それでも泣いているあたしに気を遣ってなのか、怒りを抑えるような、かみしめるような喋り方だった
「俺はそんなつもりで付き合ってねぇよ。自分はSEXできないから他の女抱けって……俺の気持ちはどうなるんだよ……つばきとだからしたいって思ってんの伝わってねぇの?」
本気で怒らせた。
あたしを引き離したり怒鳴ったりする訳じゃないけど、喋り方も声のトーンも全然違った。
「俺が他の女抱いても平気でいられる程度の気持ちかよ…」
「ちが……」
「嘘つかれんのマジで大っ嫌い」
「ごめん……なさい………」
「ねぇつばき…二人で一緒にいるのってSEXの為だけじゃないっしょ?俺だって人に説教できるような立派な付き合い方してきたわけじゃないけど、つばきに告白した時大事にするって言ったことは嘘じゃない。SEXができなくたって気持ちは変わらない」